無関心系女子の成り行き。
暇つぶしにも満たない長さですが、最後まで読んでいただけたら幸いです。
※4/10行間を空けました。
「乙女ゲームねえ」
友人の聞きなれない言葉に首をかしげた。ちゃっかりと生徒に人気の中庭ベンチを抑え、私に弁当を用意させてまでした話が、コレだ。
「そう。それでね、2年の転校生ちゃん、前から噂あったのよ。学園中の有名人にちょっかいかけてるって。」
「ちょっかいって…。んで?それとその、乙女ゲーム?とどういう関係が。」
「そう!それなのよ!季節外れの転校生、学園中の有名人とお近づきに…。もうこれは王道じゃないの!」
「いや知らないし。」
私には理解不能である。2年に転校生がやってきたのは生徒会の関係で耳にしていたが、乙女ゲームなるものがどういうものなのかは今し方聞いたばかり。ついでに、有名人にちょっかい云々も聞いたことが無かった。
「これだから咲月は…。高校生なんだからもっと周りに目ぇ向けないと!」
「興味無いって。」
やれやれと大げさな仕草で言う友人に、笑いながら答える。
お弁当袋の紐を解いて弁当箱を取り出すと、一緒に入れられた保冷剤の御蔭かほんのり冷たかった。お、今日はデザートもある。昨日大量に送られてきたメロンだろう。
「リナ、メロンあるけど食べる?」
「ツキん家のメロン?やった、食べる!!」
正確には私の家のメロンでは無いのだが。目をキラキラさせる姿を見ると、小動物の様だといわれるのも納得する。そして彼女のお弁当は、いつも主夫であるお父さんのお手製らしい。今日もカラフルで可愛らしい。お父さん、良い仕事してます。
「話がそれたけどね、要するにその転校生ちゃんが乙女ゲームの主人公みたいって事なのよ。」
「ふーん…。で、乙女ゲームの主人公とは?」
「さっきまでのはなし聞いてたー!?」
すまぬ。半分聞き流してた。
再び熱弁する彼女ことリナの話を要約すると、転校生の行動がイケメン達を攻略していく乙女ゲームの主人公の様だということらしい。正直、「で?」としか言いようがない。乙女ゲームはやったことが無いのだ。どのあたりに萌えるのかが良く分からない。
「ほら、よくあるでしょ。平凡な主人公が乙女ゲームの世界に転生して逆ハーレム!?みたいな小説。」
「ああ、前に言ってたやつね。ん?てことは、その転校生は乙女ゲームの主人公というより、その小説の主人公に近いってわけ?」
「そうそう。ムネアツじゃない!」
自分の世界に入ってしまった友人を置いて、黙々と箸を進める。そう、今は本来食事をする時間であって、顔も名前も知らない後輩の噂話をする時間ではないのだ。よって私がリナの話に付き合う必要はない。ああ、やっぱり我が偉大なかあさまの卵焼きは美味しい。定番のだしまきだが、母流のアレンジがしてあって他とは違う味わいに仕上がっている。勢い余ってメロンも完食してしまったが仕方ない。お詫びにまた持ってこよう。
「…はっ!?てことは生徒だけでなく先生にもルートがある可能性もあるわけで…なら沖田先生?いや、この感じで行くと笹川先生のが…まさかの教師キャラ2人!?」
昼休み終了のチャイムが鳴ったので、いまだ妄想に忙しい友人の肩をたたいた。