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マルテ王国史  作者: ばち公
一章:配達人(パシリ)時代
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マルテ王国首都アルクレシャ

 ケリュンは宴の明朝、日が昇るか昇らないかのうちに村を出た。森を抜け近道したおかげで、昼前にはマルテ王国首都アルクレシャに到着することができた。

 なだらかな丘の上に造られたアルクレシャは、町全体が壁で覆われた、いわゆる 城郭都市(じょうかくとし)である。壁の高さは大柄な男五人分ほどで、唯一東にある門からのみ、中に入ることができる。

 ただその堅牢で威圧感のある外見の割に、出入りの規制は、本当に緩い。理由は今、この国周辺が至って平穏であるからだ。……ただの平和ボケ、ともいう。

 この都市で一際有名なのがマルテ王城だ。壁に囲まれた都市の北西にそびえ建つ、細身で美しい白亜の城は、これまた堅剛な城壁に囲まれている。

 この壁、高いには高いが外壁ほどではなく、そのためマルテ王城の国旗たなびく優美な姿を、都市の人々は昼夜目にすることができるのである。


 ケリュンは、ひどく陰鬱とした気持ちで、その城とエメラルド・グリーンの国旗を眺めていた。その理由はただ一つ。

 例の緑色した小包の届け先がここ、マルテ城だったからである。

 家の中に入ってすぐの所に落ちていた紙を見たときには、衝撃のあまり死ぬかと思った。

 しかしいつまでもうじうじとしている訳にもいかない。ケリュンは溜息をつくと、城に向けて足取り重く歩き出した。

 嫌な予感しかしなかった。




 なんて心配したのも束の間。思っていたよりずっとスムーズに事が済みそうだった。

 事前に話が通っていたらしく、こちらから話しかける前に門番から声をかけてくれたのだ。ケリュンがしたことはと言えば、「お前がケリュンか?」と尋ねられたので頷き、小包の入った濃緑色の袋をケリュンから見て右側の門番に渡しただけである。

 名前まで知られていのには驚いたが、恐らく非常に風通しのよい組織(王国)なのだろう。

 全く、嫌な予感しかしないだなんて、失礼なことを考えたものだ。現金なケリュンは、鼻歌でも歌いたい気分でそんなことを調子よく考えていた。

 しばらくすると門番が戻ってきた。彼は左側の門番としばらく話をしたあと、申し訳なさそうな表情でケリュンに向き直った。


「すまないが、ここで報酬を支払うことはできないんだ。場所が場所だからな。私が案内をするから、付いてきてくれないだろうか。そこで正式に報酬を受け取ってほしい」


 確かに城門前で金の取引をするなんて聞いたことがない。物盗りにでも見られて帰りがけに襲われでもしたら面倒くさい。

 軽く考えてケリュンは頷いた。


「はい、分かりました」


 そうしてケリュンは、王城へと続く門をくぐったのであった。




 王城の中は不思議なほどしんと静まりかえっていた。おまけに、部屋まで複雑な道順をかなり歩き進んだのだが、その間誰ともすれ違わなかったため、ここには人間がいないのかと思ってしまった。

 そんなことを考えつつケリュンが案内されたのは、ずいぶんと落ち着いた部屋だった。まず小さな窓があるのだが、そこから光が入ってこないため中が薄暗い。敷かれた短毛の絨毯や厚手のカーテン、テーブルなどの家具はどう見ても一級品であるが、壺や彫像といった絢爛な調度品があるわけでもない。

――甲冑を置け、というわけではないが、廊下よりも地味というのは部屋としてどうなのだろう……。それとも城の部屋というのは、どこもこのようなものなのだろうか。

 しばらくはそのようなことを考えて時間を潰していたのだが、いい加減退屈になってしまった。じっとすることには慣れていないのだ。

 背後で待機している門番(右)に、


「すいません、いつ帰してもらえるんですか?」


 などと尋ねてみるが、


「申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちを」


 このような一本調子で会話にならない。さっきはもっと砕けた喋り方だったくせに今更なんだ、あんな軽い調子だったじゃないかと色々思うが、手に持つ槍と冷めきった視線が恐ろしくて迂闊な言動が取れない。弓も短刀も門番(左)に預けてしまったから心もとない。

 もしかして自分は秘密裏に始末されてしまうんじゃないだろうか、ということにまで思考が及びだしたその時、静かにドアがノックされた。

 開けに行こうとしたケリュンを制し、門番(右)がドアへと向かった。

 彼はドアの向こうに小声で声をかけ、数度言葉を交わしたあと (こうべ)を垂れ、 (うやうや)しい手つきでドアを開けた。

 ケリュンは目を見開くことになる。


 開かれたドアの向こう立っていたのは、マルテ国四代目君主、アレヤ女王であった。

女王様のおなーりー。

ところで首都名覚えずらいよ。

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