だれかの報告書
(王族の執務室ではなく、アレヤ女王の私室)
(そこのテーブルの上に、一枚の書類がおかれている)
(はじめに報告書、とのみある)
(正式なものでないのだろうか、王族専用である緑色のサインはなされていない)
(ただやけに丁寧な文字が、ひたすら事務的に書き連ねてあるだけだ)
村にて一人暮らし。両親は故人、親類なし。縁者は村人、それ以外はなし。
特別な間柄なし。近い年頃のものは、村に幼馴染の娘が一人いるのみ。
本人に関わりはなし。村、娘の一家は念入りな調査済み、関わりはなし。その他周辺、仕事関係先は念入りな調査済み、関わりはなし。
種族は純粋な人間。五体よし、障害なし、心身健康。髪目色よし、体格は可、顔は可。
身体は小柄、しかし一般以上に動く。体力もある。気配を消す、察するに長ける。
武器は弓矢、短剣。当てるに長ける。魔力なし。隠れ、確実にしとめる点が特によし。
常識あり。知恵に偏りあり。中等高等知識には欠け、思想等なし。
以下注意点を述べる。人見知りせず顔広し。ただ、人がよし。村に執着か。
その他特筆すべき点なき男。
以上。
(一番下には、サインだろうか、「アルフレド」と殴り書きがされている――)




