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鳥とクジラ

作者: 辰野さとる

鳥とクジラ


無数の鳥の群れが洋上に集まっている。

鳥たちはみな身体にロープを巻きつけていて、そのロープの先には大きな布がある。

そして、その上に乗っているのは、鳥たちの数百、数千倍はあろうかという巨体のクジラ。

「いいか、絶対に運びきるぞ!」

先頭で鳥たちを率いる鳥が叫ぶ。彼の頭には赤い帽子。リーダーの証だ。

「リーダー、このままでは納期に間に合いません!」

「速さが足りないなら新しい人員を使え! お前たちは夜を徹して働け!」

「リーダー! 一匹落ちていきます!」

「早く新しい奴に変えろ! 脱落者に構っている余裕はない!」

そこはまさに戦場だった。

鳥たちはとんでもなく大きなクジラを、とある場所まで運んでいるのだ。

運送の依頼者はそのクジラ。自分で泳いで大洋を渡るのが面倒で、鳥たちに輸送を依頼し、自分は大きなハンモックで居眠りというわけだ。

しかし、ここが厄介なところ。寝ているクジラを海に落とせば、クジラは水を吸い込みすぎて死んでしまうかもしれない。

そうともなれば鳥たちの運送会社は終わりだ。

「くそっ! なんでこんな仕事を請けたんだ……」

はじめは意気揚々としていたリーダーだが、次第に疲れが見えてきた。

「おれはもうだめだ。こんな会社やめてやる」

ついに、リーダーが帽子を脱いだ。

「そんな! リーダーがいなくなったらどうにもなりません! クジラ運送のノウハウを知ってる鳥なんていませんよ!」

横にいた鳥が悲壮な叫びをあげる。

「大丈夫だ、次のリーダーはもう決めてある」

「えっ、誰ですか?」

「おまえだ。頼んだぞ」

リーダーはその鳥に帽子を被せると、ロープを振り払ってどこに飛んでいってしまった。

「なんてことだ……これで納期に間に合うのか……?」

新たなリーダーは頭を抱えた。

そんな時、運ばれていたクジラが目を覚ました。

「おお、いまどのあたりかな」

「現在北極海近くを航行中です! 目的地にはあと一週間ほどで着く予定です!」

「んー、ちょっと寒くない? もうちょっと南のルートにしてほしいんだけど」

「は? いや、しかし、そのルートだと納期に間に合わなく……」

「できるでしょ? じゃ、頼んだよ」

クジラは返事も聞かずに寝入ってしまう。

「リーダー! 運送の経験がない新人が!」

「そんなことは知らない! できなくてもやらせろ! なんとしても遅らせるわけにはいかんのだ!」

こうして、鳥たちのデスマーチは続いていく。

Twitterのクジラと小鳥を見ていて思いついた話。

SEの小鳥たちとシステムのクジラのことを考えると泣けてきますね。

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