一目惚れでした。
「めんどくせー…」
俺が独り言を言うと横にいる中山先生に睨まれた。
俺はしかたがなく目線を英語だらけのプリントにうつした。
でもやる気は起きない。
というか、何で俺は2時間連続で塾の授業を受けないといけないのだ。
確かにもうすぐ中3だ。
正直言って、英語も理科も大嫌いだ。
でも2時間連続はキツイだろ…。
「はあ…」
俺がため息をつくとまた中山先生に睨まれ、「早くやれ」と言われた。
ここは、そこそこ有名な個別指導塾。
個別といっても、先生1人に対して生徒は2人である。
俺は、この辺の『明治ヶ丘中学』に通ってるこの春中学3年に進級する水泳馬鹿である。
友達もまあまあいる普通の男子中学生である。
カチャ、
「すみません、遅刻しました。」
俺は声がする方を見た。
その瞬間、何か心の中でキュッと締め付けるものに出会った。
…何だこれは?
「おー、遅いぞ。春期講習早々遅刻なんて、お前中々やるなー。ほらここ座ってテキスト出せ」
中山先生がそういうと、その子がストンと椅子に座った。
正直驚いた。
肌の色はそんなに白くは無いが、
肩より少し長い髪をサイドで結んでいて前髪はパッツン。
目は大きくて小柄な女の子である。
はっきり言って、顔は中の上くらいのその辺にいる普通の子である。
でも俺は、何故か釘付けになってしまった。
彼女が俺と同じ英語のテキストを出すと、
中山先生がこちらを向いて、
「田代。3分後にこれできなかったら居残りな。」
と言った。
アセって俺はプリントに向かって必死で解いた。
でも、俺は横の女の子の事で頭がいっぱいだった。