数年前、婚約者と妹に裏切られましたが……今はとても幸せに暮らしています! 〜素敵なティータイムをあなたと〜
私、ロゼーリアは、数年前婚約破棄事件に巻き込まれた。
当時私にはガイアという婚約者の青年がいたのだが、彼が私を裏切り、私の妹であるリルとかなり親しい関係になっていたのだ。
それにより私と彼の関係は壊れた。
彼は「リルと結婚する、絶対に」と言って譲らず、話し合いの果てに、私たちの婚約は破棄となった。
それからしばらく、私は酷く落ち込んだ。
しかも、揉め事に妹が絡んでいたため家にも居づらくて、同性の友人の家に泊めてもらったこともあった。
あの時期を乗り越えられたのは、家族以外のたくさんの人たちに支えてもらえたからだ。
もしそれがなかったら、身も心も壊れてしまっていただろう。
「ローゼリア、今日はローズティーを淹れてみたよ」
「そうなの?」
「砂糖ありだからね」
「助かるわ」
私は今、広大な土地を管理している家の息子である青年ラウディスの妻となり、穏やかな日々を満喫できている。
何度も消えてしまいたいと思った。こんな世界は最低だとも思った。けれども、その先にラウディスとの出会いがあった。絶望しかないように見えていた世界には確かに希望もあったのだ。できるのであれば、あの頃の自分に今の私の話を聞かせてあげたい。
「じゃあ飲ませてもらうわね……美味しい! これはいいわね。すごく良い香り」
「甘さは?」
「ほどよいわ」
「なら良かった。気になるところがあったら言ってね、改善するし」
私も、ラウディスも、紅茶やハーブティーが好きだ。なので、たびたびこうして様々なお茶を淹れて飲むことを楽しんでいる。それは派手な贅沢ではないけれど、それでも、私たちにとってはとても幸せな時間だ。
「ラウディスは砂糖なしよね」
「そうだね」
「大人、って感じ!」
「ちょっとだけ飲んでみる? 砂糖なしも」
「……いいの?」
「もちろん。実は砂糖なしの方も用意しておいたんだ。小さめのカップでね」
豪華なドレス、高額なアクセサリー、そういったものより美味しいお茶の方が好き。
それは私たち二人の大きな共通点。
温かなティータイムは、重ねれば重ねるほどに、私たちの心を強く結んでくれる。
「はい、これ」
「ありがとう! 飲んでみるわ」
「ぜひぜひ」
「……あ、確かに。これはこれでいいかも。大人っぽい落ち着いた味ね。香りの繊細なところも掴みやすいわ」
「嫌いではなさそうだね」
「ええ! これはこれで好きかも。たまには砂糖なしで飲んでみようと思ったわ」
流れの中で。
「新しい扉が開いたかな?」
「そんな感じね」
言葉を交わし、笑い合う。
「砂糖なしティータイムの日を作ってもいいかもしれないね」
「面白そうね!」
ちなみに、かつて私を裏切ったガイアとリルはというと、二人揃って地獄へ落ちた。
ガイアとリルは婚約した。
しかし幸せな未来はなかった。
結婚式の朝、リルのドレスが何者かの手で裂かれている事件が起こった。
だがそれだけでは終わらず。
ドレスは別のものを用意し何とか開催した結婚式だったが、その最中、より大きな事件が起こってしまう。
会場内にて爆破事件が起きたのだ。
そこそこ大きな規模の爆破だったので、複数の死者が出てしまい、負傷者も多く出た。
リルはドレスが燃えたためにショックで気絶。
ガイアはそんな彼女を放って会場から逃走。
以降、二人が顔を合わせることはなかった。
自分たちの結婚式で悲劇が起きたという事実を受け入れられなかったリルは心を病み、そういったこともあって入院と退院を繰り返していたが、やがて自ら命を絶ってしまった。
一方ガイアはというと、リル側から文句を言われても「無関係です」としか言わず。リルが命を落としたと知って、それでもなお、他人事のような対応をするばかり。リルの親から責められても「こちらは悪くありません」「あんなことになるなんて知らなかったから」などと返すだけ。とことん無責任だった。
そんなある夜、リルの父親と言い合いをしていて揉み合いになり、思わぬ形ではあったがリルの父親の命を奪ってしまい……牢屋送りとなった。
で、そこでもまた幾つもの問題を起こしたため、更生の可能性なし、として、やがて処刑された。
ガイアも、リルも、もうこの世にいない。
「この後どうしようか」
「どういう意味?」
「お茶、もっと淹れてこようか?」
「そんな。申し訳ないわ、何回も。……分かった! じゃあ今度は私が淹れるわ」
「いいのかな?」
「ええ。もちろん。じゃ、そういうことで!」
「分かったよ、ありがとう」
◆終わり◆




