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独り -2

 大掃除を30日までに終わらせ、大晦日は昼前に起きた。電気ケトルのスイッチを入れる。お湯が沸くのを待ちながらスマホをいじる。



 小説を書こう


 1年ぶりに開き、『みちゃこ』で検索する。マーライオニーの『おしゃまなみちゃこ』を開く。

 以前は気づかなかったが、TOPページに読者の感想欄がある。書き込みは1件、投稿したのは針井 歩太。真知子のペンネームがハーマイオニーなら、読者がハリーポッターということが、なんとなく微笑ましい。


 特にその書き込みの内容までは読まずに、「続きから読む」をタップする。画面が切り替わろうとした時、電機ケトルからスイッチがオフになる音がした。いったんスマホをテーブルに置いて、インスタントコーヒーを淹れる。




 コーヒーカップに口を当て少しコーヒーを口に含めたが、瞬間的にカップを口から離す。舌がやけどしそうなほど熱い。




「モカト、猫舌?」

 2人でソファに座り、チェックアウトまでのわずかな時間をのんびりと過ごす。コーヒーを熱がるモカトに再び愛おしさを感じ、みちゃこはこの夜何度目かのキスをした。

 この唇が離れたら、もうお別れの時間。そう思うと、永遠にこのままキスをしていたい。


 駅まで二人で歩き、ホームへ出る。電車は同じ方向なのだが、みちゃこはモカトが乗った電車に手を振って見送る。次に来た電車に乗ると、早朝のスカスカの電車の座席に着く。

 頭の中が回っている。もちろん、それはお酒が残っているということでも、徹夜で疲れたからでもない。先月、初めてモカトと一夜を共にした時は、流星に飲まされて酔っていたからと自分に言い訳をした。

 もう二度とモカトに会うことはない。そう決めたはずだった。別れ際にモカトと連絡先を交換しなかたのも、再会しない為だった。


 それなのに、3日もすると会いたくてたまらなくなった。結果、奈津子経由で流星からモカトの連絡先を聞き出した。「みちゃこさん、物好きだねー」そんなメッセージと共に。


 今度は明確に、自分の意志でモカトと会った。お酒に酔うことも無くホテルに行った。モカトは30歳にして童貞を捨てたことで、はまってしまったのだろう。再会して早々、すぐにホテルへ行きたがった。若い頃のみちゃこならそういう男に嫌悪感を覚えただろう。しかしアラフォーにさしかかった為か、それすら愛らしく見えてしまう。


 家にたどり着いた瞬間に、重い疲労感に襲われる。コーヒーを淹れる為、電機ケトルでお湯を沸かす。食器棚を開け、ピンク色のコーヒーカップに手を伸ばしかけたところで、隣にある青いコーヒーカップが目に入る。その瞬間、気づかない振りをしていた夫への罪悪感が無視できないほどに爆発した。



 思わずコーヒーを吹き出しそうになる。



 まさか、不倫をテーマにした小説だとは思っていなかった。真知子が不倫の小説を書くなど、考えたこともなかった。

『素人小説家は、自分の願望を書いている人が多い』

 勝手にそう思い込んでいた僕は、真知子に不倫願望があるのだろうかと不安になる。これ以上知りたくないという気持ちと、これ以上知ってはいけないという気持ち。同時に、知りたいという気持ちが蠢く。

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