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スカートの中 -1

 眠っている真知子を襲そってしまいたい。しかし、不妊治療に苦むのを目の当たりにした頃から、僕は気を使っている。いつか真知子から「したい」と言うまで、求めないと決めていた。

 自分を抑える為に寝室を出る。食器棚の奥に仕舞い込んだバーボンの瓶を開け、トクトクとグラスに注ぐ。ムラムラする僕の心とは裏腹に、グラスと氷が爽やかにカランと響いた。


 ソファの背もたれに体重を預け、思考を真知子から外そうとスマホをいじる。適当にニュース等を見ていたはずなのに、気づくと小説を書こうにアクセスしていた。夕方に読んだ、真知子の小説がずっと頭に残っている。


『みちゃこ』 


 主人公らしき女性の名前で検索をしたら、1件の小説が表示された。


タイトル:おしゃまなみちゃこ

作者:マーライオニー


 このペンネームを見た瞬間、真知子だと確信する。大好きなファンタジー小説のヒロインと、大好きな観光地、シンガポールの名所。その2つを混ぜた名前。

 タップすると画面が切り替わる。ポニーテールを結った女性の後ろ姿のサムネ。その下には『みちゃこの内緒の物語』という一言が添えられている。


「スカートが風になびけば視線が引き付けられるのが男の性」

 夕方の言い訳が、今の僕を責め立てる。

「これは意図的にスカートを捲る行為だ」

 しかし、この痴漢行為の欲求に、僕は抗えなかった。




 グラスのウィスキーを大きく口に含み、ゴックリと喉に流す。一瞬、強いアルコールの刺激を身体が拒否するような衝動が起きた。




 普段飲まない、強いお酒。一瞬にしてお腹の中が熱くなる。みちゃこがウィスキーを飲む様子を、隣に座る男が楽しそうに見ている。ヴァージンという銘柄のバーボン。アルコール度数は50パーセントを超える。

 このバーボンを飲ませた男は、みちゃこを酔わせてなんとかしたいなんて思っていない。単なるその場の乗り。そんなこと、みちゃこも気づいていた。

 男がみちゃこへ向ける視線は、まだ20代の瑞希への視線と全然違う。どうせ持ち帰るなら、若くてカワイイ瑞希の方がいいのだろう。それが男という生き物だ。


 面倒くさい、うっとうしい、早くこの場から離れたい。最初はそう思いながら飲んでいた。

 以前の職場でみちゃこに慕っていた後輩、瑞樹から誘われて飲みに来た。しかし、そこには奈津子もいた。奈津子は同い年だが、中途採用のみちゃことは違い新卒入社の先輩。いつもは舌打ちばかりしているくせに、男性社員の前では女丸出しになる。気にくわない先輩。

 年下でイケメンで年収1,000万。最近、奈津子にそんな彼氏が出来たそうだ。つまり、瑞希を使ってまでみちゃこを呼び出したのは、みちゃこにマウントを取って優越感にひたりたいということ。


 早めに切り上げる為の理由を考えていたら、知らない男が話しかけてきた。隣のテーブルで飲んでいた男3人組の一人。勝手に会話に入ってきて、隣に座った。彼氏が出来たはずの奈津子がノリノリで、あっという間に合コン状態へと変わった。


 みちゃこは、迷惑だという気持ちと同時に何か解放感のような楽しさを感じる。バーボンのアルコールが頭の中を駆け巡る。記憶が飛ぶほどではないが、「冷静になれ」と自分に言い聞かせようとする意識が、むしろ判断力を奪っていく。


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