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X-35 落ち葉と紅茶と平均値+焼き芋計画

帝都中央学院・中庭

視点:エリシア・12歳


秋。学院の中庭は紅葉で彩られ、落ち葉が舞い散っていた。

今日は学院祭の準備の途中、気分転換に生徒会の同級生の皆と中庭の散歩に繰り出していた。


ああ、いいね紅葉、グランディールは南東部で熱帯に近い温帯なので、雨季と乾季しかない。

帝国中央部にある帝都は普通に四季があるんだよ。

私は紅茶を片手に、マリアンヌと落ち葉を集めて即席の「紅茶席」を作る。

パラソル代わりに枝を立て、葉を敷き詰めて座布団代わりに。

紅茶の香りと秋の空気が混ざり合い、平均値的に心地よい。


「エリシアさん、何をしているのですか?」


聖女候補のミレーネが首をかしげる。

いや、あんたレオニスに引っ付いてても良かったんだが。

なぜ来た。


「紅葉狩りを兼ねたお茶会よ。秋の落ち葉を使った即席のサロンね。秋の平均値を楽しむのよ」


大分涼しくなったからね。

学院祭の準備も大事だが、たまにはゆったりとしたい。


「平均値って便利だよね!」


リュディアが元気に落ち葉を抱え込む。

……と思ったら、落ち葉に寝そべり、そのまま腹筋運動を始めた。

彼女にはゆったりという表現はないらしい。


「ちょっと待ってリュディア。落ち葉は筋トレ用じゃなくて、お茶会用なのよね」


「筋肉は裏切らないんだよ!」


リュディアは元気いっぱいで笑顔で答える。

……筋肉は裏切らないけど、落ち葉は裏切ると思う。

枯れるし。


「まあ、砂漠の乾燥した空気の方が快適ですけれど……」


クリスティーヌは扇子を広げ、優雅に座る。


「クリス、解るけど……紅葉の美しさは砂漠にはないわね」


私は皮肉を込めて返す。


「去年の学院祭では、模擬店の通路が落ち葉で滑りやすかったと記録がありますね……ここは掃除を優先すべきだと思いますが」


エドモンドが真面目に指摘する。


「ええ、それはごもっともね。生徒会主導で、生徒に箒持ってやらせたほうが良いわね。全校生徒による清掃活動。特に貴族主体でやらせましょうか。学院の外も。おほほ」


「確実に反発が起きるでしょうな。自尊心が強い貴族家から特に」


ええじゃないか。

学院専属の庭師はいるのだが、ここはあえて社会に貢献しつつ悪名を上げる。

生徒からは恨まれて、社会的には好感を得る。

私はニチャ顔をしながら紅茶を啜る。


「うへっ。エリシア、グランディアに居る時みたいなわっるい顔してる!」


リュディアから指摘が入る。

おっと、地が出るところでした。

そこへ、ふと思いついた。


「……そうだわ。この落ち葉、燃やして焼き芋にしたらどうかしら?」


「焼き芋!?いいね!筋肉にも効きそう!」


リュディアが目を輝かせる。


「効くかどうかは知らないけど、秋の味覚よ。しかも、グランディール産のムラサキイモを取り寄せてあるの。紅茶に合わせるには最高の甘味になるわ」


「まあ、ムラサキイモの焼き芋ですの?グランディール領の芋は品質が良くて美味しいですわよね」


クリスティーヌが興味深そうに扇子を閉じる。

ふふふ。グランディールの芋事情は私が最初に取り組んだ改革だからね。

あれから6年、現在は多種多様な芋が品種改良、栽培され内需だけではなく交易にも利用されているのだよ。

因みにここで言うムラサキイモとはサツマイモのことだ。

よく似た品種を、数年かけて地球のサツマイモに近い味に品種改良したものだ。

薩摩はこの世界にはあるわけないので、皮が紫色になるので名前は普通にムラサキイモにした。

地球にもムラサキイモという品種はあるが、この世界では普通のサツマイモだ。

中身まで紫ではないよ。


「……平均値で楽しむって、こういうことよ」


側に控えていたマリアンヌが茶器を置き、どこからともなくサツマイモを取り出す。


「エリシア様、こちらになります」


「え?……どこから……しかもこれ、まんまサツマイモじゃない……じゅる……」


うんミレーネ、呟きが聞こえとるよ、そして聖女候補が出してはいけない音を出している。

そしてどこからとか、そこは突っ込んじゃいけない。

日本人女性は基本焼き芋好きだよね。

バターとかあると最高だよね。

太るけど。


「焼き芋なら、掃除のついでに落ち葉を燃料にできますね……効率的です」


エドモンドが真面目に頷く。

早速落ち葉を集め、生活魔法で火を起こし、10個ほどの芋を濡らした紙で包んで埋める。

やがて、甘い香りが中庭に広がった。


「……ウマーイ!筋肉も喜んでるよ!」


リュディアがかぶりつき、目を輝かせる。

それはほぼ炭水化物だぞ。タンパク質はちょっとだけだ。


「ああ、これですわ……ジャガイモにはない甘さですわね……紅茶にも合いますわね」


クリスティーヌが上品に微笑む。


「掃除もはかどり、焼き芋も完成。そして美味い。やはり効率的です。すばらしい……」


エドモンドは満足げに頷いた。


「……平均値で楽しむって難しいけど、焼き芋なら誰も文句は言わないわね」


私は手帳に記録を残す。


秋の学院・紅葉紅茶会記録


エリシア:紅茶と皮肉と平均値担当。焼き芋計画を発案。

リュディア:筋肉信者。焼き芋を筋肉の栄養と信じて大喜び。

クリスティーヌ:焼芋信者。グランディール産の芋は大好きらしい。

エドモンド:真面目担当。掃除と効率を両立。

ミレーネ:静かに観察。首をかしげつつ焼き芋を味わう。

空気:紅葉と紅茶、そして焼き芋の香り。平均値、紅茶会から焼き芋大会へ安定。


紅葉を楽しみながら、焼き芋に舌鼓を打つ。

そして紅茶。完璧だ。


この後、学院内で勝手に火を熾してめっさ怒られたのはご愛敬。

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