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X-32 剣と影と、夜の酒

カインの声は子安〇人さんです。

グランディア領城

中庭の四阿(あずまや)


夜風が静かに吹き抜ける中庭。

石造りのテーブルには、三人分の酒器と軽い肴が並べられていた。

グランディア公爵バルバロッサとその妻アマリリス、そして客人であるカイン・ジル・アンデルセン。

帝国最強の剣士の一人にして、学院時代の旧友でもある。


「いやぁ〜ん♡このお酒、香りがとってもエレガントぉ♡さすがはアマリリスちゃんねぇ♡」


カインはグラスをくるくると回しながら、いつもの調子で笑みを浮かべる。

その仕草に、アマリリスは微笑みを返し、バルバロッサは無言で酒を注いだ。


「今日の講習、よく動いてくれたな。エリシアたちも、良い刺激になっただろう」


バルバロッサが言うと、カインは肩をすくめて笑った。


「んもぉ〜♡バルサちゃんったら褒めすぎよぉ♡でも、あの子たち、素直で可愛いわぁ♡特にエリシアちゃん、あの平均値の安定感、たまらないわぁ♡」


「平均値?を褒めるのは貴方くらいね。でも、トリスに手を出したら許さないわ」


アマリリスが、少し笑いながら言った。


「あらら。安心してね♡さすがにトリスタンきゅんには手は出せないわよ♡だってぇ、ああいう子が一番怖いのよ。エリシアちゃんもそうだけど、二人とも何かを隠してるもの。ふふっ♡」


しばし軽口が交わされた後、アマリリスがグラスを傾けながら静かに言った。


「……カイン。そろそろ、話してもいい頃じゃないかしら。あの子たちが巻き込まれる前に」


カインの手が止まった。 グラスの揺れが止まり、笑みが消える。


「……アベルのことね」


空気が変わった。

夜風が、少し冷たく感じられる。

酒を飲むカインの瞳がギラリと光る。


「……剣の道を共に歩き、同じ師に学び、同じ血を流した。私とほぼ同じ技量を持っていた。いや、時には私よりも鋭かった」


バルバロッサは黙って頷いた。

アマリリスも、目を伏せて静かに耳を傾ける。


「だが、彼は“選ばれなかった”。帝国騎士団長の推薦枠は一人。師は、私を選んだ。……理由はわからない。……そして私はアベルに遠慮してそれを辞退した。それが失敗だった。アベルはそれを“否定”と受け取った」


「そして、姿を消した」


アマリリスが言う。


「……ええ。この前、私の家の影が命と引き換えに情報を持ってきたわ。……彼は“奈落”になって戻ってきた。暗殺教団《黒の手》――帝国でも最も危険な組織の一員として。いや、今では“最強の暗殺者”と呼ばれているわ。見たものはいないとされてる……見たものは全て殺されてるから」


カインの声は、いつもの艶やかさを失い、低く、静かだった。


「彼の剣は、今でも私と同じ。でも、そこにあるのは“殺意”だけ。技術も、精神も、すべてが“殺すため”に研ぎ澄まされている」


バルバロッサが、低く問う。


「……今でも、彼を止めるつもりはあるのか?」


「ある。……でも、私が彼を“否定”したままでは、届かない。だから、私はエリシア…その前に特にあの侍女さんね。……“教える”の。剣は……彼女の場合は暗器だけど。守るためにも使えるって。それを、侍女……マリアンヌちゃんは……証明しなきゃいけない」


アマリリスが、静かにグラスを置いた。


「それが、エリシアたちなのね」


「ええ。あの子たちが、剣を“生きるため”に使えるなら――  アベルの剣にも、意味を取り戻せるかもしれない」


沈黙が落ちた。

夜風が、静かに草を揺らす。


カインはグラスを持ち直し、再び口元に笑みを浮かべた。

だが、その笑みは、どこか寂しげだった。


「……ま、でもぉ♡その前に、エリシアちゃんにはもうちょっと腰の使い方を教えなきゃねぇ♡剣はぁ、腰で攻めるのよぉ♡」


バルバロッサは、苦笑しながらグラスを傾けた。


「またお前は……」


アマリリスは、静かにその場を見守っていた。

この人の業は深い。その性格もそうだが、何かを諦めている節もある。

この人を救うことは出来るのだろうか。


夜は更けていく。

剣と影と、過去と未来が交差する、静かな晩酌の夜だった。

子安〇人さんは尊敬する声優の一人です。仕事を選ばないその姿勢。最高です。

深夜異世界系アニメにも積極的に出演しています。

マク■ス7からの大ファンです。

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