↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/78

1-3 初期調査 ― 企業コンサル魂の目覚め

翌日、結局馬車に積んでいた野営用のマットレスで夜を明かし、目覚めの紅茶を一口飲んだ私は、椅子のギシギシ音に負けじと、静かに決意を固めた。


「……さて、早速現地調査といこうか。まずは修道院の現状把握からか。」


「承知しました。では私は予定通り裏側の調査を。」


マリアンヌは、修道服の袖から何かをスッと取り出した。

小型のメモ帳と、見たことのない細いペン。

うんとさ、それのどこら辺がペンなの?

先に返しがついたアイスピックにしか見えないんだけど。

先っちょから緑色のインクが・・・インク?いや、それインクじゃないよね?毒だよね?毒針だよね?


「……それ、調査用具じゃなくて暗殺道具じゃない?」


「ふふっ。調査と処理は常にセットです。」


「いやいやいや、セットにしないで。ふふって何だよ。ここ修道院だから。清らかな信仰の場だから。アサシンギルドじゃないから。」


マリアンヌはニコリと微笑み、音もなく廊下の奥へと消えていった。

あの子、絶対壁歩いてるよね。物理法則、守ってないよね。


私はため息をつきながら、まずは水回りの確認へ向かった。


・・・井戸はある。が、バケツが錆びている。ロープは切れかけている。

水を汲んでみると、色が……うん、これは飲んじゃいけない色だ。

前世で見た「飲んではいけない水ランキング」堂々の1位。しかも泡立ってる。なぜ?

「浄化魔道具、要るな……。てか、これ魔物の巣じゃないよね?」


次に厨房。

調理場は、油と煤で黒ずんでいる。鍋は焦げ付き、まな板は割れている。

冷蔵庫?そんな文明の利器なんてあるか。

あるのは、謎の壺と干からびた野菜。


「……これは、食事というより苦行だな。」


修道女たちの食事風景を見てみると、皆無言でパンをかじっている。

そのパン、硬すぎて武器になりそうなんだけど?

しかも、飲み物がぬるいハーブ水。いや、これハーブっていうか、ただの草じゃない?


「……まずは食事改善だな。栄養バランス、衛生管理、調理技術。全部アウトだ。」


次に寝具。

どのベッドも何かしらの問題を抱えている。傾いていたり、足一本なくて代わりにレンガを重ねてはめていたり、マットレスは沈み込み、枕は……うん、枕っていうか、布の塊?(再確認)

シーツは黄ばんでいて、人の股間のあたりが来る部分に何かの染みがある。何かは聞かない。絶対聞かない。


「……これは、寝るというより、耐えるだな。ある意味修行といえるのか。いえねーよなぁ。」


私はメモ帳を開き、前世のコンサル魂を呼び起こす。


初期改善ポイント(エリシア式)


水回り:井戸の浄化、バケツとロープの交換、魔道具設置

食事:献立再構成、調理器具の更新、衛生講習(←ここ重要)

衣服:下着、生理用品の補充

寝具:寝具一式の交換、衣服を含めた洗濯体制の整備

業務フロー:修道女のシフト管理、役割分担の明確化

教義:信仰と実務の両立を目指す再教育



「……あれ?これ、完全に仕事してるよね?領地改革してる時も思ったけど、転生してまで社畜って、どんな罰ゲーム?」


紅茶をもう一口飲んだ私は、椅子のギシギシ音に再び耐えながら、静かに呟いた。


「スローライフって、どこに売ってるんだろうな……。通販とか・・・密林とかで買えるなら、今すぐ注文したい。」


その時、マリアンヌが音もなく戻ってきた。


「裏側の調査、完了しました。資金の流れに不審点あり。修道女の中に、教会本部との癒着が疑われる人物がいます。」


「……やっぱりか。どこにでもいるな、そういう奴。」


「処しますか?」


「処さない。まずは話し合い。穏便に。穏便にね?」


マリアンヌは、無言でサムズアップした。

その笑顔が、なぜか背筋を寒くさせるのは気のせいじゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。