表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/71

1-7 スローライフの兆しと終焉(ルシオ登場)

それから数日後の朝。

紅茶は香り高く、寝具はふかふか。

修道女たちは笑顔で祈り、厨房からは煮込みスープの香り。

少し開いた窓からは、春の柔らかな日差しが差し込み、優しい風が吹き込んでくる。

中庭や畑では草刈りが進み、噴水の水は澄み、石像の首も接着剤とパテでなんとか復元された。


教会本部へは改善と改革の報告書を提出済み。

修道院長の減刑を求める嘆願書も添えてね。

本人も反省してるみたいだしね。

昨日お会いしたら指輪とかもしてなかったし。

3日後には公爵領から工作兵らが到着し、修道院全体の修繕も開始予定。


「……これだよ、これ。私が求めていたスローライフ。紅茶と、静かな時間と、ちょっとしたDIY。」


私は満足げに紅茶を啜る。

マリアンヌは隣で、修道女たちのシフト表を確認している。


「エリシア様、今週の業務は順調です。皆、時間通りに動いています。」


「うん、いい感じだね。これなら、しばらくは穏やかに過ごせそう……」


その瞬間、扉がノックされた。

コンコン。

私は無言で紅茶を置いた。

マリアンヌも無言で立ち上がった。

修道女たちが何事かとざわめく。

……来た。

奴だ。奴の気配がする。ポンコツ君の!


「失礼します。教会本部よりの伝令です。」


現れたのは、女性かと見間違うくらい可愛らしい顔立ちの少年。

――教会本部伝令官、ルシオ・ポーンコーツ。

修道服の見習い装束に身を包み、手には巻物。

最初、追放先であるこの修道院への勅書を持ってきたのも彼だった。


「エリシア様、教皇猊下より次の修道院への巡礼勅書が届いております。」


「……ルシオ君、君は悪くない。悪くないんだけどね?」


「は、はい……」


「でもね、紅茶を飲んでるタイミングで来るの、やめてくれないかな?これ、完全にフラグだから。」


「ふら…?申し訳ありません……でも、命令書には“至急”と……」


「うん、知ってる。教会本部って、私が紅茶を淹れると転勤命令出すシステムなの?神聖魔法的に連動してるの?」


マリアンヌが静かに背後に立つ。


「準備、整えておきます。」


「……スローライフ、どこいった……」


私は椅子に沈み込み、紅茶を見つめた。

その香りは、いつもより少しだけ苦く感じた。


「こうして、エリシア様の“静かな革命”は終わりを迎え、新たな修道院へと、巡礼という名の転勤生活が始まるのであった。」


「・・・・マリアンヌ・・・それシャレになんないから!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ