プロローグ
誤字脱字等あれば適時修正します。
ラングラル王国。教授に渡された資料に書いてあったこの国の名前だ。
周りを見渡してみると木々ばかりの森だが、これは最初に言われた通りだな。召喚の魔法陣が人目に付くといけないからという配慮らしい。貰った地図によればこの森は教授の私有地で、屋敷は少し先にあるらしい。
今日から3ヶ月……いや、こちらの世界では約10年間俺は時給1万円で異世界調査に来た。調査が終われば約2000万のバイト料が手に入る。
2000万もあればしばらくバイトをしなくても秘境探索に費用をあてられるし、そもそも異世界調査なんて俺のためにあるようなバイト……伊集院先生、ありがとうございます!
俺、葉月夏生は大学院で文化人類学を研究している学生で、伊集院先生はそこの教授だ。研究室のパソコンで夏休みのバイトを探している時に異世界調査のバイトを提案してくれたのが伊集院先生だった。
――1ヶ月前。
「葉月くん、バイト探してるならいいバイトがあるよ」
ニコニコしながら伊集院先生が近づいてきた。某パンアニメのおじさんのような風貌は学生たちに人気の好々爺である。しかし、この笑顔は俺に無茶ぶりをしてくるいつもの顔だ。
「先生、ありがたいですが最低日給1万はほしいのでそれ以下ならお断りします!!」
俺の趣味には金がかかる。海外の秘境探索に必要な費用となると移動費だけでもとんでもないのだ。学費や生活費はありがたいことに親が払ってくれているので助かっているが、流石にこの金のかかる趣味にまで援助を頼むのは気が引ける。
「日給1万か。なら時給1万でどうかな?」
「時給1万?!……ひ、非合法ではなく?」
「ああ、こちらの法律には抵触しないだろう」
……こちらの法律?俺はゴクリと唾を飲んだ。
伊集院先生はそのままニコニコしながら椅子に腰掛けて続きを話し始めた。
「もしやる気があるのなら時給1万、3ヶ月で君を雇いたい」
先生が真剣な顔でそう言った。
1日8時間ならざっと60万くらいか。学生バイトには破格だが一体何のバイトなんだ?先生が雇うって事は研究助手的なものだろうか。
「本当に3ヶ月で60万くらい頂けるならちょっときになりますが……」
「60万?違うぞ。だいたい2000万だな。約90日×24
時間だからな」
「……とりあえず、内容を聞きましょう」
二千万はほしい。でも流石に内容次第である。
「内容は君がやると言うまで教えられない。一応守秘義務があるのでな。断っても単位には影響しないから安心したまえ。ただ、君が適任だと思ったから声をかけたんだ」
し、守秘義務……。まあそれだけの価値があるって事か。伊集院先生の論文を読んでこの大学に入ったのだから尊敬する人に適任だと言われたのならきっと光栄な事なのだろう。
「やります!非合法じゃないのなら!」
「そうか、では明日私の自宅に来なさい。詳細を説明しよう」
伊集院先生はニコリと笑うと研究室を出ていった。
――翌日、伊集院先生の自宅で異世界調査の話を聞いた俺は興奮して気絶をした。
伊集院先生の自宅から異世界に行けることにも驚いた。なんでもありかよ。
陰謀論のような話だが、世界中……地球以外にもいくつかの支部があり数年に一度使者を派遣しているとか。
こちらの世界では三ヶ月とはいえ異世界では十年らしいし、そうなると提示された2000万も妥当な気がしてきた。
ちなみに死の危険に関してだが、異世界でもしも死ぬ事があれば強制的にこちら側……地球に強制送還される魔術具?を渡された。ひとつしかないのでもしも戻って来ることがあれば2回目は行かせることが出来ないとも言われたので、気をつけなければ。
細かいことは俺にしか読めない手帳の魔術具に書いておいたので暇な時にでも見なさいと言われた。
魔術が存在する世界が現実にあるなんて未だに実感が湧かないが……俺はこの世界に来るにあたって地球人だとバレないように世界契約魔術というやつで容姿や年齢を変えている。
これは異世界調査の際に作られた魔術らしく、地球に戻る際には解除されるらしい。
今の俺は青みがかった黒髪に灰色の瞳、身長が165cmほどの穏やかそうな少年だ。
年齢は15。異世界で25歳の誕生日を迎えたら契約終了という事で、未だによく分からないまま俺は長旅に出かけることになった。
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