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仮)極龍我  作者: 鳥龍
7/13

    其の六

 あの湖がある場所で、彼らは戦っていた。数十体の野獣たちと一人の人間。

「夜龍!」

「おぉ! 剣斬。やっとその気になったか」

 俺は夜龍に走り寄りながら剣を抜き放ち、その刃先を夜龍へ向けた。夜龍は驚きながらも冷静に構え直し、俺の剣を受け止めた。

「裏切り者め……。いくら本部隊の大佐であろうと、俺には勝てまい」

 夜龍が俺の剣を弾いた。余りの力の強さに耐えきれずよろける。その隙を逃すまいと迫る夜龍に向かって走り、お互いの剣をぶつける。

 そのまま、何秒か過ぎた。

 夜龍の目は殺気立っている。そのせいか、黒い瞳の中で闇が渦を巻いているように見える。

 ……俺の目は、どんな感じなんだろう。

 そんな事を考えていたせいで、力が抜けていた。夜龍は俺を思いっきり吹っ飛ばした。

 その勢いに耐えきれず、背中を強打した。

 あまりの痛さにうめき声が漏れる。起き上がる間もなく、夜龍は俺の側に立っていた。

「剣斬。俺はお前を許さねぇ!!」

 夜龍の剣は、俺の左腿の肉を抉った。

 今まで出したことのない絶叫が、血しぶきと共に流れ出る。

 初めて味わう痛み。

「う"ぅ"……」

「貴様は確かに強い。生まれながらの剣士だもんな。だが、俺はお前に何か負けん。剣の実力も……忠誠心の強さも!!」

 裂帛の奇声を上げると、剣を振りかぶって下ろした。間一髪で受け止めたが、力を入れようとすると腿から血が溢れ出し、力が入らない。

「ぎゃっ!」

 夜龍が脹ら脛を抑えた。足下には樵が立っていた。夜龍の脹ら脛にかじりついたらしい。

「おぃ! おめぇら! 何ボーっと突っ立って見てんだよ。剣斬を助けるぞ!!」

 みんなで夜龍に襲いかかったが、呆気なく吹っ飛ばされた。野獣たちが夜龍に勝てるわけない。

 痛みを必死にこらえて立つ。

「先ずは剣斬、お前からだ」

 剣の刃先を俺の喉元に向けた。

「った」

 夜龍の後ろには光が立っていた。夜龍を叩いたらしい。

「……!! ざけんな! この、チビが!」

 柄で思いっきり光の頭を殴る。光は泣き声も上げず、石を投げ始めた。その一つが夜龍の額に当たり、夜龍は額を抑えうずくまった。

 その隙を逃すまいと、奇声を発しながら切りかかる。必死の思いで俺の剣を交わした夜龍の額からは、溢れんばかりの血が流れ落ちていた。

 腿が痛くて、集中出来ない……。

 痛みをこらえて俺の剣を弾き飛ばした夜龍は、横一文字に剣を振り回した。その一撃が俺の右肩を捉え、血が滴る。

 俺が負けじと振り下ろした剣の刃は、夜龍の右足首を切断した。

 今までに聞いた事のない、かつて、友だと思っていた者の絶叫が聞こえる。

 俺はふらふらと、樵の元へ行った。

「みんなを連れて逃げろ! 俺が時間を稼ぐ。行け!」

「お前は……お前は来ねぇのかよ!? 俺、お前を置いて行け」「うるせぇ!! さっさと行きやがれ! このチビが!」

「なっ……! 俺はチビじゃねぇ!!」

 そうやって本気で怒る樵に、歯を見せて笑う。

「あばよ」

 俺は出血の止まらない右肩を抑えながら、夜龍に斬りかかった。夜龍は座ったまま俺の剣に太刀打ちする。この状態なら、俺の方が有利だ。

 後ろから、樵がみんなを誘導する声が聞こえる。

 名残惜しい。

 だが突然、目の前がぼやけた。頭に血が来ない。

 出血の量が多くて、体内の血液が少なくなっているのだろうか……。

『剣斬。剣斬……!』

 聞いた事もない、女の声がする。


 誰かが俺を、抱き締めている気がした……。



一応、第一章は終わりです。話しについてこれなかった方は言って下さい。 第二章を更新するのはだいぶ先になります。

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