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仮)極龍我  作者: 鳥龍
5/13

    其の四

 今日は用事がある。それは、王に呼び出されたこと。何を申されるのかは知らないが……。

 俺は大きな扉の前に立った。それを見て、門番の者が扉を開ける。

 だだっ広い部屋の奥には王の座る椅子。入ってすぐの左右と、王の椅子の近くの左右には、家来が頭を垂れていた。

 だが、よく見ると、王の椅子には誰も座ってない。

「ザガス国王は何処(いずこ)に?」

 近くに居た家臣に問い掛けた。

「間もなく来ます故、もう暫くお待ち下さい」

 俺は王の椅子の前で、頭を垂れた。


 王が来られたのは、その30分くらい後だった。

「剣斬。面を上げよ」

 軽く頭を下げ、王の顔を見る。

「禁断の森に少女が居ると聞いた」

 ……えっ!?

 何故、王が知っている!?

 とりあえず、冷静になるように意識した。

「誰にお聞きなされましたか?」

「夜龍である」

 ……ま、まさか!

 夜龍に見つかったのか……。

 ……無理もない。もう何ヶ月も、あの森へは行っていない。所詮、光が見つかることなど、時間の問題だったのだ。

 俺は禁断の森に居る野獣たちを裏切ってしまうと分かっていながら、しらを切った。

「私は、知りませぬ」

「そうか。では、剣斬があの森へ行かぬ間に、紛れ込んだと?」

「定かではありませぬが、その可能性が(たこ)うございます」

 王は暫く、考えている仕草をしていた。次に何を言うかは、既に決まっているはず。

「では、夜龍が野獣らと共に少女を見逃した、と言うことになれば……。剣斬よ、お前はどうする?」

「……なっ!?」

 俺の予想と違う。

 俺の予想は、少女を始末する、と申されるはず。なのに……。

「王! 私に、夜龍や野獣たちを斬れと仰せになるのですか!?」

「見逃したとは言え、処罰を下さなかったのだ。始末する他に何がある?」

「……いえ。先程の無礼、お許し下さいませ」

 俺がやった、と言えなかった。俺は、禁断の森の野獣たちだけではなく……夜龍までもを裏切った……。


 鬱々とした気分で部屋に戻る。部屋の隅にあるベッドに倒れ込む。

 夜龍は、唯一の友であり、同士であり、信頼出来る人間である。そんな夜龍を……殺せない。王の命令であろうと、夜龍だけは殺せない。

 俺は……どうすればいい? 誰か、誰か教えてくれ! 助けてくれ! 夜龍を殺したくないんだ! 誰か……。誰か!!

 心の中で、ありったけの力を振り絞り叫ぶ。

 誰にも届かない叫び。

 誰にも伝わらない想い。

 孤独が増す辛さに、涙が止まらなかった。


「お前は、人の命と王の命令と、どっちが大切なんだよ!?」

 樵の言葉が脳をよぎる。

 王に忠誠を誓った俺にとって、王の命令は、自分の命より大切だ。だが、夜龍は、俺のたった一人の、信頼出来る人間だ。


 ……そうか。


 俺が死ねばいい。



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