表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮)極龍我  作者: 鳥龍
3/13

    其の二

 俺は少女の方を振り向いた。

 少女は俺と目が合うと目を見開いた。顔が青ざめていくのがよく分かる。

「貴様は、何故ここへ来た? 女だろうが子供だろうが、容赦はしない」

 少女の小さい体が小刻みに震えている。だが、どんなに待っても話す気はなさそうだ。

「言え!」

 俺は刀の切っ先を少女の喉元に突きつけた。

「待ってくれ!」

 樵が焦った様子で間に入ってきた。

「この子は、話せねぇんだ。何故かは分からねぇけど……。すっげぇいい奴だって、俺、分かるんだ。剣斬が来るまで、俺たちでこいつのこと見張ってたけど、何もしねぇし……」

「うるせぇ!!」

 俺は樵の言葉を遮った。

「ここに入った奴らは処罰する。それが、忠誠を誓った我がザガス国王の命」

「お前は、人の命と王の命令と、どっちが大切なんだよ!?」

「……!!!?」

 思わず黙ってしまった。

 確かに俺は、多くの者を処罰してきた。だがそれは、ザガス国王の命令だからしてきたこと。

 人の命と王の命令……。

 どっちが大切か、だと……?

「俺は……。……」

 王に忠誠を誓った俺にとって、王の命令は絶対である。

 しかし、命も大事だ。

 だが、しかし……しかし!!

「剣斬」

 ハッと顔を上げると、この森の長が立っていた。

「今のお主にとって、どちらが大切なのかは分からんかもしれぬ。しかし、命の重さや大切さは知っておるじゃろう。わしらも、お主の王への忠誠心が強いことを知っておる。じゃからここは、この少女をこの森へ住まわせる、と言う意見にまとめてはどうかのぅ」

「こいつを……此処に?」

「そうじゃ」

 確かにいい案だと思う。しかし、王は俺に、森に入った者を処罰するよう申された。

 ……そうか!

 この森から出さなければ、生かしていてもいいのかもしれない。

 俺は樵の横を過ぎ、少女のもとへ行った。

 横へ下ろした刀を、再び、少女の首の高さへ持ってくる。

「剣斬?」

 樵が緊張した面もちで、俺に問い掛けた。

「長の意見に賛成しよう」

 そのまま刀を軽く振り下ろした。すると縄が解け、少女は束縛から解放された。

「だが、こいつをこの森から絶対に出すなよ」

 そう言って俺は森を出た。

 西の空は既に、朱を帯びていた。


それから用のない日は毎日、あの森に行くようにした。



 禁断の森のもう一人の管理者。夜龍。

 俺より年が二つ上で、剣が強い。それに周りからの信頼も厚い。友や家族の居ない俺にとって、その存在価値は大きい。友であり兄であり……国王以上に信頼出来る人間である。

 彼の地位は本部の少佐補佐。俺より下の地位。理由は分からないが、多分、俺の父と呼ばれるものと国王の関係で、生まれながら本部の大佐になったのだ。と、俺は考える。

 俺の信ずる友は、夜龍一人である。

 俺が忠誠を誓った王は、ザガス国王一人である。

 そして、俺は彼らを信じている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ