表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮)極龍我  作者: 鳥龍
12/13

第三章 其の一

「剣斬、起きろ。剣斬!」

 俺を起こしたのは烏鷹だった。


 ゲルグ国王に忠誠を誓い、幾日か経った。そして俺は、大佐補佐という高位を頂いた。

 大佐は烏鷹だ。

 光の側に居るから、姫の護衛兵とばかり思っていた。しかしそれも、高い身分だからこそ、任されている務めのようだ。

 その点は、ザガス国とは全然違う。

 ザガス国には王子が居るらしい。しかし、ザガス国王や王妃、一部の者しか見たことないと言う。

 一体、どうやって生活しているのか。

 それさえ、俺は知らない。

 ……隣国でも、ここまで違うとは……。やはり世界は広いな。


 俺は烏鷹や他の兵たちと共に庭へ出る。

 そこから、俺たちゲルグ国の戦士の一日が始まる。

 朝から昼まで、同士たちと剣を交える。昼から夜は自己練習、余談など、自由な時間。

 ゲルグ国の戦士たちは強い。俺より遥かに強い者たちが何人も居る。

 烏鷹もその一人だ。

 そして今、烏鷹と剣を交えている。が、勝てない。烏鷹は俺の動きを読み、必ずかわす。

 ……何故だ!?

 烏鷹は錘のついた棒を下ろした。

「剣斬。お前は強いが、動きが遅い。それに変な癖がついているようだ」

「変な癖?」

「斬るところを凝視する癖だ。例えば、腹を斬ろうとするとき、腹を凝視している。『今からあなたのお腹を斬りますよ』と言ってるみたいにな」

 烏鷹は苦笑いした。

 言われてみれば、確かにそうだ。俺は、その目的を凝視する癖があるようだ。

 相手の視線や、ちょっとした目の動きで心を読み取る。さすがは、大佐に位置するだけあるな。と、俺は感心した。

「もう一度、斬りかかって来い!」

 俺は頷き、奇声を上げ、目線に注意しながら斬りかかった。が、上手く当たらなかった。

「俺の目を凝視するな。それじゃあ、斬りたい所が見えんだろ」

「おう……」

 烏鷹の言うとおり、斬りたい所が見えなかった。だから、上手く出来なかったようだ。

「俺が一回……いや、いつもやってるのと同じだが……とりあえず、ゆっくり一回やるから見とけ」

 そう言って、数メートル離れた。

 そこで剣を構え、小走りで来る。今の目線は俺の目だ。

 一瞬、目線を変えた。それが何処を見たのかは分からなかった。

 すると態勢を変えて、一気に走り寄って来た。

間合いに入ると同時に脚を見た。そして、そこを叩いた。

「痛っ!」

 わざとかは知らないが、烏鷹が思いっきり俺の脚を叩いてきた。

「はは。悪い」

 笑いながら言っている彼に、謝る気はなさそうだ。

「さぁ、剣斬。俺がいつ目線を変えたか、答えてみろ」

「間合いに入る前に一回、間合いに入ってから一回」

「……その答え方なら失格」

「なっ! 何故だ!?」

「間合いに入る前だろうが後だろうが、おおざっぱ過ぎんだよ。まぁ、説教はこのくらいにしよう。……ついて来い。姫様がお呼びだ」

「……え?」

 光に呼ばれるのは、初めてだ。そして、彼女に会うのは、俺がゲルグ国王に忠誠を誓って以来だった。

 ……何の用だろうか?

 多少の不安を残しながら、烏鷹について行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ