プロローグ
俺の名は剣斬。このザガス国の戦士である。
そして今日、三年以上争いを続けてきた隣国を倒した。これでまた、我らがザガス国の勢力も強くなった。
残る国はこのザガス国も入れて三つ。
北のザガス。西のウォーレ。東南のゲルグ。
今一番強い国は、東南に勢力を広げるゲルグ。
そして今宵、勝利の宴をやるらしい。俺も招待された。
しかし俺は、自ら断った。何故なら、俺は人の多い所は好まない。それに俺は誇り高き孤高の戦士。独りで居るのが正しい。
そう思う。
自室は広くなく、寝床に鎧置き場などと華やかな物など一切ない殺風景な部屋。
相棒の剣、極龍我を手に取る。鞘から抜き月明かりの下、刃をよく見てみる。すると所々が欠けているのがよく分かる。
……無理もない。
何ヶ月も手入れしてないからな。
袋から研ぎ石を取り出し、刃を優しく研ぐ。
シャァッ、シャァッと擦れ合う音が静寂の夜に響く。
……勝利した褒美に、新しい剣でも貰うかな。
そんなことを頭の片隅に置きながら研いでいると、欠けた所が綺麗になっていた。
ふと見上げた月が、赤くぼんやりと闇夜を照らしていることに気がついた。
俺はその月に剣をかざした。
すると突然、剣が白い光を放ち始めた。あまりの眩しさに目を硬く閉じる。
光が弱くなったのを感じ目を開けた俺の手の内に、極龍我はない。だが、代わりに一匹の龍が宙に浮いていた。
「お前は……もしかして……」
「我が名は極龍我。そなたの剣である」
勘は当たっていた。
「何故、剣のお前が龍の姿をしている?」
「そなたが何故戦うのか、その理由を知りたい」
「戦う理由? そんなの、我らがザガス国のために決まっている」
「ほう。そなたは今までの者たちとは違うようだな」
「今までの者たち……?」
「左様」
今までの者たちとは、極龍我の前の持ち主たちらしい。
「今までの者たちは、どんな理由だった?」
「愛しき者を守るため……そう言っていた」
「愛しき者……?」
はっ、と窓を見ると、極龍我が剣に戻っていた。
俺はしばらく極龍我を眺めていた。そして、もうしばらくコイツを使っていくことにした。