エピローグ
ラーフブラック視点
ドバが住んでいた町にはいまだに避難地から住人が戻ってきていない。
なので仮面で黒づくめの男でも姿を変えずに墓参りをすることができた。すでにドバの遺体は彼の家族が眠っているであろう場所へ埋葬し、その墓石のまえにこの地方で咲く花を手向け程度に置いた。
無神教に近いおれにとっては祈りの恰好をとるわけにはいかないのでそのまま立ち尽くす。
ふと立ちつくすと俺は自分の中の世界で思案してしまう。
『イザナミ』。
無神教の俺が日本神話をざっくりと適当に説明しよう。
イザナミとは日本神話の神のひとりでイザナギの妻をイザナミという。二人で協力して国を作り、色々な神を生んでいくのだが、火の神を産んだときに、イザナミは命を落としイザナギは黄泉の比良坂という地獄のようなところに行って、イザナミを救おうとする。ここまでは普通の話のようだが……ここから神話らしくかなり癖が強くなる。出口の途中で化け物のイザナミの顔を見てしまい、そこからイザナギとイザナミは喧嘩して言い争う。
イザナミが一日で千人殺すと言ったあと、イザナギが千五百人子供を産んでやると言い返す。
そしてイザナギは生の神、イザナミは死の神として敵対するようになったんだ。諸説あるしあくまでも誰かが作った設定だ。
この国には国民に非公式の研究機関、組織、実験施設が『非公式』に存在する。それらは普段は一般人の目に触れられることはない。
俺もその研究機関の人間のひとりだった。
だけど危険な研究と実験を完璧に隠蔽することはできない。
天津雅騎の義理の父親を殺したあのロキのときのように。
そしてあのヤクモの暴走事故によって命を落とした白神雅也博士がいい例だ。
九十九を開発したのは彼だと世間で言われているが、実際は違う。
人工知能に『死の概念』を植え付けることなんて一般のエンジニアにできるわけがない。おれも佐竹の凸助のデータを調べてみたが肝心の部分が接触不能になっていた。
つまり九十九の元のプログラムは誰かが作ったものであり、白神雅也博士はこのシステムを何らかの方法で手にし、九十九を発表したのだろう。
その黒幕とはだれなのか?
おそらくそのひとりは天津のマネージャーである城鐘海鳴だ。
そして彼女を支援しているこの国の重鎮たちだ。
彼女は天津雅騎を芸能界に売り出して有名にして『イザナギ』を作り、この国の人間に変わった特殊能力をもったヒーローがいることを伝えた。
なぜヒーロー『イザナギ』が人を救うのか?
これからおおくの人が『イザナミ』もといこの国の暗部がもたらした副産物によって死ぬからだ。
ロキがあのデパートで多くの人を殺してその結果、天津が能力に目覚めた。
すべてを『正義』にするために。
そう。政府が自作自演で『災厄』を起こして、ヒーローがそれを救って『解決』する。
その主人公が天津雅騎だ。まさにあいつは道化の英雄なのだ。
そしてこの俺も城鐘海鳴によって邪魔者、『悪役』として処理をされようとする。
同じく舞台に上げられた『役者』だということだが、このまま彼らに『役者』として操られるわけにはいかない。
そのために俺はあの空母と兵器で横浜に攻め入り天津たちをひきつけ、そしてその隙に鈴木たちにイザナミの情報を盗んでもらった。
天津は気づいていないようだったが、城鐘はもう感づいているかもしれない。
もっともイザナミ――いやこの国の闇は俺が知っている以上に深く、盗んでもらった情報も氷山の一角なのが見て分かった。
これからさき、この中東の紛争国と同じように日本の人間も多くの人間が死ぬことになるだろう。
俺の身体が化け物になってしまったように、魔獣ロキのように多くの怪物が生まれ、スーパーヒーローが倒す。それをテレビで流して娯楽として報道する。
そんな異常な国で俺は『悪役』だと言われても俺のなすべき研究をやめはしない。
俺は狂思想科学者として悪役スタイルを貫き続ける。
こちらにむかってくる気配を感じた。住人が戻ってきたのだろうか。
どうやらあまりにも、もの思いにふけっていたので俺は周囲の気配を察知できなかったようだ。そろそろ日本に帰ろう。
「じゃあなドバ。仲良く家族で暮らせよ」
俺は最後に友人に別れの言葉を呟いたあと、近づいてくるひとたちに気づかれないように姿を変えてその場を去った。
ここまでご愛読ありがとうございました。
この天津雅騎とラーフブラックのシリーズはまた随時応募していき、その都度、複線や設定を更新したり、表現や文法がおかしいところは新たに書き直したりしていこうと思います。
とくに天津雅騎のヒーローの名前がまだ決まっていないので、書いているうちに決めてみようとおもいます
なので皆さま感想は辛口でどこが悪かったなどかを指摘していただけたら幸いです。
仕事をしながらで書くので更新がかなり遅れるかとおもいますが
また次回作ができましたら、ご愛読ください。




