機械神の英断23
プールでの出来事があった数日後。
僕は先日、列車での事故や大雨での災害物資運搬などを自分の能力で手助けするヒーロー活動を行い、一方でヒカルや葉介、桐生先輩の力を借りて、芸能活動のほうも順調だった。
しかしぼくには気になることがあった。先日あの工場で取り逃がした笑い(ラーフ)の仮面を被ったあの男のことだ。あの男はまたどこかで、悪事を働いているんじゃあないのか。そんな気がしてならなかった。
「天津くん」
透き通るような声で呼ばれて振り返る。海鳴だった。
「海鳴。おはよう」
「ええ。おはよう。……なにかあったの?」
「実はこのまえの工場であったあの男。ラーフと名乗ったあの男のことが気になるんだ」
僕が自分の中に貯めこんでいた疑問を海鳴に打ち明けると彼女はすこし考えたようなあと。
「あの男はとうぶん現れないわ」
と断言した。
「な、なんでそんなことがわかるんだ⁉」
「あの男が小悪党だからよ。たしかにあの黒い仮面と鎧のような修道服のようねコスチュームはきになるけれど、銀行強盗の事件なんて、あれからもう三週間が経過しているのよ? もうそろそろあの仮面を脱いでいるんじゃあないかしら」
「……仮面を脱いで犯罪をしているっていうこと?」
「警察からの連絡を待ちましょ。あの男のような能力をもった人間がいればそいつが――」
そのとき、海鳴の電話が鳴り始めた。しかしありふれた普通の着信音じゃない。どこかの基地が爆発を起こすかのような大きなアラーム音だ。
「もしかしてその音は……」
質問するまえに海鳴は電話に出た。そして電話口の相手となにやら喋っている。僕は下手に会話に割り込むような真似はせず、静かに見守っていた。
「……雅騎くん」
しばらくして電話を会話を終えた彼女が僕に向き直って
「……あの黒い仮面の男が現れたそうよ。……しかもネットで堂々と犯行予告をだしていいるらしいわ」
と半ばあきれた表情で言い放ち、スマホで動画を読み込んでいく。
僕はその動画を横から覗き込んだ。
動画を見た僕は思わず口をぽかんと開けて唖然としてしまった。
「な、なんでこの男は動画で犯行予告をっ⁉」
「……わからないわ。動画投稿者の真似かなにかのなのかもしれないわ」
動画では黒い仮面をつけたラーフが自分を撮影していた。
「みなさんどうもこんばんは。今日はみなさんにお知らせがあります」
まわりの景色と声以外の雑音から察するにどうやらどこかの船の上にいるようだ。
「……ずばり‼ わたしの目的は今から軍隊を使って日本を侵略することです‼」
「日本の侵略っ⁉」
「天津くん。静かにして」
また怒られた。
「スーパーヒーロー天津雅騎くんとイザナギの諸君。あと日本の国民諸君?……いや、ちがうな……まぁいいや……」
セリフをどこか言い間違えたラーフは改めて宣言した。
「希望を捨てろ。絶望の中に答えがある。俺は百万人を救う英雄にも神にもなる気はない」
声のトーンを変えて、ラーフは不気味に言い放った。
「……俺が悪役だ」
その最後の一言を最後に動画が終わる。
「……いったいやつの目的はいったいなんなんだ?」
僕のつぶやきに海鳴はすぐさま答えず携帯の画面をしばらく見つめていた。
そして僕に向き直り、
「大変よ。天津くん。横浜のみなと空母が近づいてきているらしいわ」
涼森凛奈視点
「ここが横浜か。……ラーフっていう人、こんなところでいったいなにやる気なんだろ?」
私はきょう、学校をサボって横浜のみなとまで来ていた。
はじめてきたけど、横浜って聞いてたわりにお洒落なお店。
学校をサボってまできた理由はあの黒い仮面の男が日本を攻めるべく、空母を乗っ取って侵攻してきているじゃあありませんか。
なにを。どうやって攻めてくるの?
そんなどうでもいい疑問はさておいて、そんなすてきな話題を私は見逃しません。
わたし、涼森凛奈は誰よりもはやく動画投稿してバズらなければいけないのですから。
「よし、やろう♪」
今日も私は動画を投稿するべく、カメラを自分へと向けた。
気がつけばわたしのほかにも報道陣の人たちがいる。
でも動画投稿者はいない。チャンスだ。
台本を作っているヒマはない。ロキにも連絡したけど繋がらないけど待ってる暇はない。
「どうもー♪ みなさんこんにちは。リンリンですっ♪
そして私はきょうも動画を撮影し始めるのだ。
誰になにを言われようと、叩かれようと止めるつもりはない。
これがわたしのすきなことなんだから。




