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機械神の英断⑰

中道陽生視点

天津雅騎たち御一行様方が出撃したあと、俺たちは警察の方々から『すぐに帰れ』と言われた。

じゃあなんでこんな大仰しく『逮捕』だとか『保護』だとかいう名目で拘束し、『留置所』や『取調室』というところまで使ったんだ? 

その答えはおそらく城鐘海鳴がプロデュースした『イザナギ』やその支援(バック)の城鐘財閥の力かもしれない。

どちらにしても大げさに俺たちを拘束したのは涼森のせいだろう。

まぁ、それは置いといて、あいつらが『ヤクモが暴走した』といって出て行ったのが気になる。

ヤクモはなぜ暴走したんだ? 科学者としてその原因を突き止めたい。

そのためにはまず涼森から離れなければと、おもい涼森に別れを切り出そうとする。

「……涼森。あとはひとりで帰れるよな」

「え? なに言ってんの? 家まで送ってくれるのが普通でしょ? 襲われたらどうするの?」

当たり前のように送ってくれるようにたのむように言ってくる涼森。

「ふざけるな。おまえを襲うもの好きなんていない」

おれはそんな涼森を女子扱いしていないので、そう言い切った。

「ひっ、ひどい。私はこれでも動画をあげたら家に不審者がくるぐらいの有名人なんだからね」

「住所特定されてるじゃねぇか。なにやってんだよっ⁉」

「とにかくきてよっ‼ 普通の女の子より、敵が多いから襲われやすいのよっ‼」

「自業自得だ。ボケ」

「いいからきてよっ‼ こころぼそいのよっ⁉」

ぎゃんぎゃんわめいて、駄々をこねる涼森に俺はしばらくどうしようかと迷ったが、

「わかったよ。……家までついていってやる」

しかたがなく家まで送ってやることにした。

「よし♪ これで帰りの電車代を節約できる。ラッキー♪」

「なに電車代おごられるきなんだよっ⁉ いやちょっとまて。なんでお前そこまで金がないんだっ⁉」

「なんでって……カメラとかの映像機材とか、その他商品の紹介動画とか撮ってるからだよ?」

「……おまえの親、警視総監ってあの警官にきいたんだが……なんでそんなにも金がないんだ?」

「お父さんが厳しいからだよっ⁉」

なぜか逆切れされた。

「あのオヤジ。警視総監なのに、ぜんぜん私の事件をもみ消しにしたり、お小遣いを法外にくれたりっていう金持ちのお嬢様扱いしないんだよっ⁉ ひどくないっ⁉」

「ひどいのはおまえの思考回路だ。世の権力下の子供がおまえみたいなやつらだとおもわれるだろうが」

「いいじゃないの。親ならこどもをあまやかせてよっ‼」

「すごい発言だな。……というより、おまえは一人っ子なのか?」

「……なんでそんなこと聞くの? 妹萌えなの?」

「ちげぇよ。ただ単純に気になったんだが、なんで警視総監が児童養護施設の子供をなんで引き取ったのか? って聞きたいんだよ」

「……そっか。……………………うん。なんでだろ?」

「…………おまえなぁ……」

と、俺たちのまえに数人の男性があらわれた。

「……? なんだおまえら?」

男たちは全員マスクやお洒落サングラスをつけて、苛立った様子だ。

「……おまえ、リンリンの彼氏か?」

「ちがいます」

「即答っ⁉ いやたしかにちがうんですけどぉっ⁉」

俺はその男たちがかなり憤っている雰囲気を察して、もしやと推測してきいてみる。

「……もしかして、あなたがたも涼森の動画で被害を受けた人たちですか?」

俺のその質問に男はさきほどまでの威圧的な態度ではなく、仲間をみつけたような嬉しい顔をしていた。

「おまえもかっ⁉ そうだおれたちは毎年恒例の恋愛イベント、『バレンタインデー』で

男心をもてあそばれたんですっ‼」

「う、うううぅぅぅ……」

男たちが嗚咽の混じった声で泣きはじめた。

まぁだいたいバレンタインデーでひどい目にあったというなら、だいたい予想はつく。

「……おおかた、チョコを渡したあとに『ドッキリ』という看板をみせたような感じのドッキリだとおもうんですが……」

「そんな、なまやさしいもんじゃねぇよっ‼」

なんか地雷踏んでしまったよ。……なまやさしくないのか。

「……おまえ、バレンタインデーでなにやったんだ?」

「………………なにも?」

はらたつ。とぼけるまえの沈黙はいったいなんなんだ。

「……すみません。俺はこいつと最近会ったばかりなんで、ちょっとどういうことなのか教えてくれますか?」

涼森の苛立ちが若干顔にでてしまったためか、男たちはびびっている。

「う、うん。この動画なんだけど……」

男が俺にスマホをみせて、涼森の動画をみせてくれた。……おれも、今日一日こうなるんだったら、みたくもないけどみてくるんだった。

『はい、どうもみなさんこんにちはリンリンです。リンリン♪ もうすぐですね。バレンタインデーということで、チョコを作りたいとおもうんですけど……ただつくるだけじゃあもったいないんで、いろんな素材を入れていきたいとおもいます♪』

…………普通はチョコを溶かすときは湯煎用にボールを入れるのだが、こいつの場合、鍋にそのままぶち込んでいる。その中にはさらに……。

『ええ。まずは、こちらプラモデルを作ったときにでてくるプラスチックのゴミ。それとこのハウスに入っているゴキ――。うわ、きもちわるっ。まぁいいやこの中にあるラムネっぽいのも入れちゃえ。……うわっこんなやつ食う人間みてみたいわほんと』

中にいれたのは到底人間が食べてはいけないものばかりだ。プラスチックのゴミはもちろん有害だし、体内で消化されることはない。ゴキブリはそれ自体が有害物質はないものの、家庭内の有害な細菌を取り込んでいるため、食べることはできない。

 「……なんだこれ? ……もしかして……おまえらこれを……?」

 「……ううぅ……」

 俺の問いかけに男たちは涙で答える。

 『はい。じゃあこれを学校中の女子から、モテないっていうアンケートで上位に入った男の子たちに配っていきたいと思います』

 動画の場所は学校へと変わり、楽しそうに説明をしている。

 「……あの……これ……。動画のネタで余ったから、食べてくれる?」

 「えええぇぇぇっ⁉ い、いいんですかっ⁉」

 「うん。感想をちょうだい♪」

 ニマニマと嫌な笑顔を浮かべる涼森と目の前で泣いている男たちのひとり。

 「か、家宝にしますっ‼ ありがとうございますっ‼」

 「ううん食べて。すぐ食べて。撮るから食べて。持ってかえらないで」

 「は、はぁ……じゃあ……いただきます……」

 なぜ急かされるのかわからない男は仕方なくその場でチョコを開けてたべると……。

「う、うええええぇぇえぇ。な、なんだこりゃっ⁉ むちゃまじぃ……」

  すると、動画内の涼森がわざとらしくぶりっ子キャラへと変わり、

「……も、もしかして美味しくなかった? がんばって作ったんだけどだめだったのかな?」

とわざと不味く作ったチョコを健気に失敗したような上目遣いで男子に問いかけた。

「そ、そんなことないよ。ぜんぜんおいしい♪」

涼森は顔は可愛い。だからそんな子にチョコをもらっただけで嬉しいんだろう。

「ありがとう♪ じゃあぜんぶたべてね♪」

だけど心は悪魔だ。

『いやぁ、今回は大成功しました♪ みんなゴキブリ入りのチョコを食べた食べた♪ たべてるときの動画を撮らせてもらったけれど、笑いがとまらなかったよ♪』

そのあと帰宅して、編集を終えたあとに撮った涼森はゲラゲラと笑って男たちの動画をあげている涼森。そして彼女はチャンネル登録がどうのこうのといったあと、その動画を終わらせた。

「……おい、おまえ男心なめてるのか?」

俺は完全に罪人確定である人物に向き直り、責め立てる。

「い、いいじゃないっ⁉ わたしみたいな美少女にチョコもらえるのよっ⁉ うらやましいじゃないっ⁉」

 本人は開き直って逆キレしだした。それと美少女は自分のことを美少女とは言わない。頭のおかしい女が自分のことを美少女っていうんだ。

 「ふ、ふざけんなっ⁉ おれたちはそのまま保健室に行って、『食あたり』の診断をうけたんだぞっ⁉」

 「おれなんか、そのまま入院したんだっ⁉」

 と、怒り心頭の男たちが口々に文句をいうなか。俺は男の中で気の弱そうなやつが持っている袋が目についた。

 「おい、おまえ。そのふくろはもしかして……」

 「……こ、これはそのときにもらったチョコの残りで……」

 なんだぜんぶ食わなかったやつもいたのか。正解だな。

 「よこせ」

 「え? は、はい」

 素直に渡してくれる男子学生。見た感じひとつ下の後輩らしい。

 「おまえ。携帯持っているなら撮っておけよ」

 「え?」

 聞き返す後輩に俺は答えず、男たちと言い争っているあの涼森(あくま)のもとへと向かった。

 「と、とにかく動画を削除してくれっ‼」

 「それより謝ってくれっ‼ 俺はあの日以来、チョコが食えなくなっちまったんだよっ‼」

 責め立てるおとこたち二人組に涼森はぶんぶんと頭を振って答える。

 「あー、もううるさいっ‼ そんなことしているヒマないの。あんたたちの動画だけで謝罪してたら、私は毎日謝罪動画あげなきゃいけないでしょっ‼ そんなのごめんよっ‼」

 まったく反省していない涼森の前までいくとなぜか彼女は勝ち誇ったように薄ら笑いを浮かべる。

 「ふんだ。わたしには今日の――ぐびゃあっ‼」

 俺は彼女の下あごを掴んだ。口が無理矢理開けられて、彼女の顔が短くゆがんだ。

 「ふぁ、ふぁにおふるの?」

 いきなりのことで驚いた涼森はまともにしゃべれない口で抗議してきた。

 「よろこべ涼森。……いやリンリン。お前の作ったチョコが余ってたそうだぞ」

 俺が彼女にとって見覚えのある小袋を見せると彼女の目が恐怖に染まる。

 「ふあぁっ⁉ ふふぉふぇふょお? ふゃ、ひゃめへえぇっ‼」

 抵抗する彼女に俺はむりやり黒い物体をねじこんだ。

 「……ふがっ⁉ ふごっ? ふげえぇっ⁉」

 「……こ、これは……」

 「……いくらなんでも……」

 「……エロすぎる……」

 なぜか男たちが顔を赤らめて、股間を抑えていた。こいつら……変態なのか?

 「う、うぉええ…………のんじゃ……うおえぇぇぇぇえっ‼」


 今日二回目のゲロを吐いた自称美少女動画投稿者を最終的には男たちは許してくれたようだ。


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