機械神の英断⑮
天津雅騎視点
警察の人から連絡をもらって、僕たちはいそいで現場に急行することになった。
あのふたりの処分に関しては、今回は『厳重注意』ということでお咎めなしで帰ってもらったもの、凛奈と一緒にいたあの中道という男。あの男もあの事件に巻き込まれた関係者だということはおもいもよらなかった。いや、あの事件はあれからまだ時間がたっていないし、彼もこの近くの中学ならば関与していても不思議ではないだろう。
「それにしても、なんでヤクモがいきなり暴走しているの? 動かせるのはヒカルだけじゃあないの?」
「そ、そんなことわたしに聞かれてもわかんないわよっ⁉」
ヒカルにそう聞くのは、まずかったらしく、いつとちがう口調で怒られてしまった。これが
「そんなことはないわ。ヤクモを操縦するのは登録すればだれでもできるわ」
かわりに海鳴が説明してくれるが、いまだに人工知能についてのことはよくわからない。
「そ、そうなのか……?」
「とりあえず、暴走しているヤクモをとめればいいんだ。あとのことはまかせようぜ」
「……う、うん。……わかったよ」
葉介の言葉に僕は戸惑いながらそのまま目的地まで待つことにした。
ようやく車で現場についた僕たちが目にしたのは、火災が起きている研究所。そしてその一角にあるグリーンの芝生が敷かれた演習場の上ですでに起動しているヤクモと。
「な、なんだっ⁉ だれかがヤクモと戦っているっ⁉」
黒く鮮やかで長い黒髪が印象的な少女だった。髪を後ろで結い上げてはいるものの、長い髪は夜風になびいていた。しかし髪のことなど少女は気にも留めず、その睫毛に添えられた切れ長の目がヤクモを捉えたまま離さない。
両手に握っているのは、はっきりとわからないが鉈だろうか? 剣のわりにはかなり刀身が短いが刃の幅が三十センチほどある大きさだ。
「……ピ、……ピ……」
操り主を持たないヤクモは電子音を発したまま直立したままだ。
するといきなり海鳴がすたすたと僕よりも彼女たちに近づきはじめる。
「ちょっと海鳴。あぶないよっ⁉」
そうぼくが注意するが海鳴は気にすることなく、黒髪の少女へ声を張り上げた。
「桐生さん。そのヤクモは破壊していいわ。ガンブレードの使用も許可します」
海鳴の言葉に黒髪の少女はヤクモから目線を離さずに答える。
「了解。ガンブレードをソード形態に移行する」
ガン『ブレード』という武器であればそれは鉈ではなく、剣だったようだ。
すると、彼女が構えていた獲物の先から青く光る粒子が飛び出してた。
「いくぞっ‼ ガンブレードっ‼」
桐生さんとよばれる女性は大きな掛け声とともにヤクモへと踏み込む。
ガンブレードは大きく振り上げられ、ヤクモの胴体を斜めに袈裟斬りする。
「………………………………」
ヤクモはそのまま無機質に機能を停止し、胴体が崩れ落ちた。
「わ、わたしのヤクモが……」
自分の愛機が破壊され、ショックを受けるヒカルに海鳴はすぐにフォローをいれながら。
「気にしないで。ヤクモは量産機なの。すぐべつの機体を用意できるわ。……それよりあなたたちに彼女を紹介するわ」
「いや、大丈夫だ。自分でやりたい」
彼女のことを紹介しようとするが彼女自身に断られてしまう。
「私の名前は桐生刀華。きみたちより年齢が一つ上の先輩で、わたしもイザナギに配属されることになった。よろしくな」




