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機械神の英断⑬

天津雅騎視点

 

 今回の番組の分類はいわゆるクイズ番組というものだった。僕とほかの出演者がチームとなり、五人一組の二組十名でクイズ対決を行い、勝ったほうが優勝。といういかにもシンプルなものだけど、正直ぼくは頭の良いほうではなく、出される問題なんて本当はわからないはずなんだけれど……。

 「……これってズルなんじゃあないの?」

 僕は海鳴(みなみ)から渡されたクイズの答えを書かれた台本を見ながらそう聞いた。

僕こと天津雅騎と七瀬(ななせ)(よう)(すけ)八武崎(やぶさき)ヒカル、(しろ)(がね)海鳴(みなみ)の四人は一緒の楽屋に集まって、クイズ番組の答えを見ていた。

するとヒカル僕をたしなめるようにこんなことを言い出した。

「いちおう言っておくけど雅騎。普通に答えたら、ダメだからね」

「へっ? どういう意味?」

ヒカルの言っている意味がわからない。クイズに正解するのがクイズ番組じゃあないのか?

「つまり、答えをやるから『面白く間違えろ』ってことだよ」

僕の疑問に葉介が答えてくれたが、やはり意味がよくわからない。そんな僕に海鳴が口を挟む。

「……クイズ番組っていうのは、難しい問題を回答者が正解することが面白いという面だけじゃあないの。テレビ越しで自分がわかるような簡単な問題を、テレビの出演者が間違えて『こんなこともわからないのかよ』と優越感にひたるのが嬉しいのよ」

「そ、そうなんだ……」

僕はその言葉を聞いて思い当たる節があった。

「それでもまぁ……」

葉介はなにかを言いかけたあと、いきなり僕が持っていた紙を奪いとる。

「えっ⁉ な、なにすんのっ⁉」

すごい早業だったので、さすがに反応できずなかった。というよりなんで自分ももらった紙があるのに、僕のぶんを奪い取ったんだ?

「雅騎にはこういうボケは無理だ。だから答えを覚える必要もないし、面白い答えを探す必要もない」

「……そんな……無理ってことは……やってみないとわかんないだろ?」

たしかに葉介の言うとおり、僕は嘘をつくことが嫌いだし、面白いことを言うユーモアもないけれど、やるまえに無理と言われては僕も傷つく。

しかしそんなやり取りを見ていたヒカルがフォローを入れてきた。

「……確かに七瀬の言うとおりかもね。雅騎は答えなんか見ずに正々堂々と答えればいいのよ。そのほうが雅騎らしいよ」

 ……たしかにヒカルの言うとおりだ。たとえ間違っても、面白くなくても正々堂々とやったほうが僕らしい。

 「……そうだね。海鳴。僕の問題だけ、さっきの紙に書かれていない問題をだしてくれる?」

 そう海鳴に伝えると海鳴はふぅっと短い溜息をついたあと、優しいまなざしで答えてくれた。

 「わかったわ。天津くんだけ、さっきの問題と違うのを出してもらうわ」

 「ありがとう海鳴。これで……」

 すると突然、僕の携帯電話が鳴り響いた。

 「……たしか、楽屋の中は電話しても……」

 以前スタジオで携帯が鳴ったときにものすごく怒られたのを思い出した。

 「楽屋の中は大丈夫だよ。誰からかかってるの?」

 芸能界の先輩であるヒカルに教えて、半ば安心したあと、自分の携帯の表示をみて驚いた。

 「……凛奈からだ。珍しいな。電話なんかしないと思ってたのに……」

 まえに連絡先を変えてから、文章で連絡とかは行っていたけれど、直接電話をしたことはなかった。

 「もしもし。凛奈?」

 僕は通話ボタンを押した瞬間に無駄に明るくて元気な声が聞こえてくると思って、なかば身構えていたけど、聞こえてきたのは機械で音質を操作された声だった。

 『くっくっくっ。天津雅騎よ。お前の幼馴染は預かった。この女を助けたければ住所○○○○―○○○まで来い』

 「な、なにっ⁉ お、おいそれいったいどういう意味……」

 僕が言葉の意味がわからず狼狽しているあいだに、通話は切られた。

 「……な、なんだよいったい……?」

 「どうかしたの?」

 「どうしたんだ?」

 困惑している僕に他のみんなも異常を察知したようだ。続いて凛奈の携帯から何かの画像が送られてきたので、すぐに開くとそこには縄で手足を縛られた凛奈がいた。

 「……涼森さんになにかあったの?」

 僕は凛奈の画像を海鳴に見せる。

 「どうやら凛奈が悪い奴に捕まったらしい。助けにいかないとっ!」

 「はぁっ⁉ 助けにいくってもうすぐ番組の本番だよ⁉」

 「人命が最優先だよ。番組よりも人のいのちがかかってるんだっ!」

 急いでスーツに着替えるため、服を脱ぎ始めたそのとき。

 「待って天津くん。……涼森さんなら、もう一つの可能性があるわ」

 海鳴は自分の携帯を取り出してどこかに電話をかけた。

 「もしもし。急いで確認してほしい端末があるの。…………ええ。…………涼森凛奈という携帯の撮影データをお願い…………………………そう……やっぱりね。その『今回の企画』っていう動画を私の端末に送って…………ええ。ありがとう。…………それじゃあね」

 彼女は通話を切ったあと、ふぅっと大きなため息をつきながら自分の端末を見せた。

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