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機械神の英断⑩

天津雅騎視点

転校生の紹介が終わったその日の放課後、僕は海鳴達と一緒にある研究所に連れてこられた。

研究所の奥に入っていくと精密機械とロボットが並んでいた。

「……これは……女の子型ロボット?」

ロボットはどこかウェストが細く女性の形をしていた。

「量産型支援ロボット。通称『ヤクモ』だ」

白髪交じりで彫りの深い顔つき中年男性がこちらに近づいてきた。

「このプロジェクトを任された白神卓也だ。よろしくスーパーヒーロー」

白神さんは柔和な笑みとともに握手を求めてきたので、こちらも応じた。

「こちらこそ。よろしくお願いします」

「彼女は九十九のプログラミング開発者であり、このラボの所長も務めているのよ」

海鳴の仲介で、ようやく僕はこの人がロボットに詳しい人ぐらいの認識で理解できた。

「そうなんだ。でもなんでこのロボットは女の子の形をしているの?」

「わたしが操作するからよ」

どこかで聞いたような女の子の声が聞こえてくると同時になにかのコードで繋がっていたヤクモは突然動き始めた。

「……もしかして、その声は八武崎なのか?」

「そうだよ雅騎。私がこのヤクモを動かしているの」

近くにあった大きめのモニターに八武崎の姿が映し出された。彼女の身体は体のラインぴったりのラバースーツのようななものにたくさんのコードがついているような恰好だった。

「な、なんなのその恰好?」

彼女はいったいなんであんな恰好をしているんだ?

「このロボットはいわゆるSF映画で直接に操縦するロボットとは違い、安全な通信車で電波を使って操作するのだ。操作方法も簡単で、女子高生アイドルでも操作することができる。

「じゃあ……海鳴が言ってたメンバーって……」

「そう。八武崎さんと七瀬くんが新しいメンバーよ。天津くんと七瀬くんも合わせてヒーロータレントグループを結成したの」

「ヒーロータレントグループって、そんな事しなくても、俺は一人で十分だよ」

思わず 少し虚勢を張った言い方に海鈴は反論を始める。

「じゃあ、仮面をつけたあの男を取り逃がしたのはどうしてなのかしら?」

「……そ、それは……」

口ごもる僕に海鳴は付け足していく。

「あなたの能力はすごいのよ。でも一人でヒーロー活動はできないし、あなたはテレビに出たらあまりうまく話せなかったでしょ?」

「た、たしかに芸能界の仕事はすこし僕には荷が重かったけど……」

「いいじゃあねぇか。英雄(ヒーロー)芸能人(にんきもの)も、一人よりでなんでも背負い込まずに仲間に頼れよ」

そこで割り込んできたのはあの転校生の七瀬葉介だった。

「改めてよろしくな。最初に言っておくけど、俺もただの人間じゃあない。忍者だ」

「に、忍者っ⁉ そんな時代劇みたいな存在がいるのっ⁉」

僕は七瀬の言葉が信じられず、驚きと動揺を隠せない。

「特殊能力に目覚めたスーパーヒーローに、時代劇みたいな存在って言われてもしょうがないだろ。心配すんな。今の忍者はただの武道家みたいなもんだ。伝統の武道をやっているけれど、それ以外はなんにもしていない」

七瀬が何かをごまかすように、そして茶化すように言った。

「だから私は七瀬くんと八武崎さんをスカウトしたの。二人ともとても社交的でユーモアに溢れている人だし。戦力としても、あなたのフォローができるとおもうわらテレビに出ても問題なくフォローしてくれるはずよ」

「よろしく雅騎。ヒーローグループ『イザナギ』の誕生だよ」

ヒカルがヤクモを操りながら、僕に手を向けた。

「……『イザナギ』っていうのは?」

 また新しい言葉がでてきて、僕の頭の中は混乱した。

「日本神話でこの国を作ったといわれる神様のことさ。お前や俺たちは色々な人達を助けるだけじゃない。この国の国民の代表にならなきゃいけないってことさ」

葉介はそういいながら、ヤクモと俺との握手の上に手のひらを重ねた。

「天津くん。あなたは一人じゃあないわ。あなたのまわりには多くのサポーターがいるの。それを忘れないで」

芸能界に別に興味はないけれど、こうして力になってくれる人がいる。

戦いにおいても、私生活(プライベート)でも友人や仲間がいるのは心強い。

これならあの笑いの仮面を被った男『ラーフ』を捕らえることができる。

「わかった。みんな、これからもよろしくな」

僕はようやくそうみんなに宣言すると、彼らも理解してくれたようで僕に信頼のまなざしを送ってくれる。

僕たち『イザナギ』はヒーローとして、タレントとして活動を続けていくのだった。




 そしてもう帰ろうかとおもったそのとき、ヤクモの操縦室からでてきた八武崎が僕に近づいてくる。

 「……八武崎さん。どうかしたの?」

 心配する僕に、彼女はおずおずときりだした。

 「あのさ。……雅騎。わたしのこと、八武崎じゃなくて、『ヒカル』ってよんでくれない?」

 「ええっ⁉」

よく見ると彼女は少し顔を赤らめていた。彼女も少し恥ずかしいらしい

 「な、なんでっ⁉」

 「だって、城鐘さんのことは『海鳴』って呼び捨てにするでしょ?」

 「それは……海鳴は中学のときからの仲だから……」

 むかしは『城鐘さん』って呼んでたな。いつのまにか名前で呼び合う仲になっていた。

 「…………いいんじゃない。べつに」

海鳴がフォローを入れるような言葉をいったつもりだったが、機嫌わるそうにとげのあるような言い方だった。

「……お、怒ってるんですか城鐘さん……」

「いいえ。城鐘家の令嬢なのに呼び捨てにしてくる相手なんて、私のまわりであなたしかいないわ。……なのにアイドルだと名前で呼ぶのが気が引けるなんて…………すこし城鐘家をバカにしてるんじゃあないの? ……天津くん?」

こ、こわい。無茶苦茶こわいよ。このお嬢様。

「……き、きょう会ったばかりなのに、いきなり名前呼びできないよ。クラスのファンになんてよばれるかわかんないし。……なぁ『葉介』もそうおもうだろ?」

僕はなんとか助けを求めるべく、彼の『名前』を呼んだ。

「お、おまえ……ほんとうはかなりのバカなんじゃあないか?」

葉介はすこし呆れていたようだった。

「まぁたしかにクラスの目もあるけれど、これから『イザナギ』として仲良くやっていくんだから、名前で呼び合うぐらいいいんじゃないか? ……『彼女の本性』もそのうちわかってくるしな」

「『彼女の本性』?」

僕がその単語をオウム返しすると。八武崎、いやヒカルがまるで猫のようにぴくっと反応して僕との距離を縮めた。

「よ、よろしくね。雅騎」

すると彼女は僕の腕にその小さな体をまさに猫のようにすりよせてくる。

 「う、うん。よろしくヒカル」

 思わぬ不意打ちに僕も思わず名前で呼んでしまう。だけどそれよりもさっきから海鳴の顔が鬼のように険しくなってくるのがきになっているのが、恐ろしい。

「……わたしのことも、『海鳴』ってよんでもいいわよ。『葉介』くん。『ヒカル』さん」

と友好的なセリフなのに、どこか鬼のような圧力をかける海鳴に対して、

「ええ。これからもよろしくね。『海鳴』さん」

こちらは邪悪な悪魔のような雰囲気のある笑みを浮かべていた。

「……ほんとうにモテるな雅騎。うらやましいぜ」

と、葉介はなんだかさらにあきれたように笑いながら見守っている。

「葉介。見てないで助けてくれよ」

葉介はそんな俺の救いをあざ笑うかのように、指をサムズアップして火に油を注いできた。

「まぁ、本命は二人じゃあなくておれなんだろ?」

そんなわけあるか。


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