scene16 TS兄貴!復活の息子
見慣れぬ天井、部屋の中は甘い匂いが充満し、全体的に桃色の家具で構成されている。
「ふみゃ?」
間の抜けた声をあげながら状態を起こした俺は改めて周りを見渡す、ふわもこ系アイテムにつつまれた若干ファンシーな部屋、そして窓の外には真っ暗な闇が広がっている。
・・・これは誘拐されたか?
頭から血の気が引いていくのを感じながらも、寝かされていた布団からシーツを剥ぎ取り部屋の隅にうずくまる。
まずは状況を整理しよう。
確か俺は6限目の授業の途中で気を失い、その後の記憶がない。
という事は学校関連の人の家?部屋の内装からして女子の部屋っぽい感じはするが・・・。
いや、わからない少し前に読んだ幼女監禁物では、まず幼女に合った部屋に閉じ込め、そういうプレイに走るという題材もあった。
つまりこの部屋は俺の為だけに作られた調教部屋の可能性が出て来る。
よく見たらボールペンやらなにやら、穴に入れるような物も見受けられるし・・・。
そんな考察をしていると、部屋の外からパタパタという音が聞こえてくる。
犯人・・・か?
俺はシーツを被るように震えながら体を覆い隠す。
「桜ちゃ~ん、起きたかな~?」
「お!襲わないでぇ!」
ん?あれ?
背後を振り向くと、目をパチクリさせる真衣ちゃんの姿。
ふむ、なるほどね。
俺は納得したようにシーツを脱ぐ。
恐らくここは真衣ちゃんの部屋なんだろうな。
納得したように頷いていると、真衣ちゃんの後ろから更に二人の陰が現れる。
「あ!桜ちゃん起きたんだ!良かった~」
「まったく、びっくりさせるなよ」
容赦無く抱き着いてくるひまちゃんに腹を強打され軽く悲鳴をあげ、若干そわそわしている聡ちゃんを見上げる。
「ほーら!さっちゃんも、ぎゅー!って」
「い、いや!?私は別に!?」
多少の抵抗の後、ひまちゃんに捕まった聡ちゃんは、あれよあれよと俺に寄り添う形になり、顔を真っ赤にして頬を掻いている。
ふむ、女子二人にハンバーガーにされるとは中々良い経験を得たな。
まぁ俺の中身は19男だから犯バーガーだが。
役得役得、と拝みつつも一番状況を教えてくれそうな真衣ちゃんに視線を向ける。
「うーん、色々あったんだけどね~」
真衣ちゃんはどこから話そうかな~と唇に指を当て考え込む、その仕草、グッドです。
その後真衣ちゃんに聞いた話によると、授業で気絶した俺をひまさとコンビが運んでて、そこに宗太(弟)が登場、玄さんという警官と共に現場にパトカーでかけつけた真衣ちゃんに保護され、宗太に関しては今日は家に帰れないらしい。
「ウチの馬鹿なおと・・・お兄さんがごめんなさい」
「いいのよ~好きでやってる事だし~」
真衣ちゃんは相変わらずほわほわしながら頬に手を当てている。
真衣ちゃんマジお姉ちゃん。
「それで急だったからな、良かったらウチに泊まらせないか?って話してたんだよ」
「そうそう!折角だからアタシも二人の関係をもっと聞かせて欲しいなー・・・って」
視線を逸らす聡ちゃんと、面白い獲物を見つけたかのようなひまちゃん。
何やら嫌な予感を覚え、真衣ちゃんに視線を向ける。
「で、でもこういうのって親御さんの許可とか必要だよね?」
「えっへん!今日もウチがここの長なのであ~る~」
なんてこったい。
いや、まぁ俺としても泊まる事に抵抗がある訳ではないし、別に良い・・・ん?
俺はここに来て、懐かしい感覚に襲われる。
生まれてから19年、共に過ごした戦友が、女になった事によって消えていた愛刀が・・・。
「ある!?」
大声を出したせいで皆がびっくりしているが、俺もそれどころではない。
というか何でまた!?いや、原因はとりあえず後回しだ、今は他にすべきことがある。
「う、う~ん!一番上のお兄さんが気になるから今日はやめとこうかな~」
引き攣った笑みを浮かべつつお泊り会を無しにする作戦を立てる。
この生えてる状態でお泊りなんかしてしまったら、見つかった時大変な事になる。
「あ~それもそうだよね~!あれ?一番上のお兄さん・・・名前なんだったっけ」
ちくしょう真衣ちゃんめ、小っちゃい頃はあんだけ世話してやったってのに・・・。
「ま・・・まぁそういう訳で俺はちょっと帰るよ!皆ありがとね!」
そういう事なら仕方ないかーと三者三様の表情を浮かべる三人をよそに、いそいそと着替えて帰路につく。
真衣ちゃんが「そんなに慌てなくても良いのに~」っと言ってくれているが、それ以上の爆弾を股間に抱えてしまっているんだ!
俺は可能な限り笑顔でバイバイすると、いそいそと真衣ちゃんの家を後にする。
聡ちゃんが「家までは見送るよ」、と言い出したが、そのくらいなら問題ないか。
ひまちゃんに至っては「ごゆっくり~」と何やらニヤニヤしていた。
そんなこんなでほぼ真後ろの家までついた俺は、聡ちゃんと別れ、急いでトイレに駆け込む。
「あ・・・ある・・・!やっぱり・・・ある!」
何が原因かはわからない、だが何も情報が無かった俺にとってはまさに奇跡。
とりあえず原因を探るのが先決なのだろうが・・・。
カッと目を見開き、元俺の部屋にズンズン侵略、本棚のラバーを外してエロ漫画を取り出す。
「まずは戦友の帰還を祝して盛大に祝おうではないか!」
俺はワクワクと少女監禁物のエロ漫画を読み進め・・・。
「・・・」
次に少女凌辱物を読み進め・・・。
「・・・」
だ、だめだー!心までは男に戻ってないのか、ピクリとも反応しねー!
むしろ自分自信が少女であるが故か、嫌悪感すら抱くしまつ。
折角の奇跡だが・・・どうやら俺は息子を労ってやることすら出来ないらしい。
溜息と共に遠い目を向けていると、いつぞ間違えて買ったBL本が視界に映る。
「・・・いや、流石にないだろ」
そう言いつつチラリと表紙を見てパラパラ・・・。
やばぁい!?少し興奮してる!?
俺は急いでBL本を投げ捨てると、今の自分の部屋に戻る。
あれならもしかしたら息子を満足させてあげられるかもしれない・・・けど・・・けど・・・。
「それは同時に男として大事な何かを失う気がする」
俺は虚ろな目でベッドに潜り込み、風呂も入らずに意識を手放すのであった。




