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TS兄貴!  作者: ヒロメル
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第二話 TS兄貴!の為に女性服を買いに行くことした

 拝啓父上、母上、お元気でしょうか?

 ワタシは元気です、ですが兄貴は姉貴になってしまいました。


 家族のグループLINEに書き込みをしようとして・・・そっと消去する。

 ただでさえ精神を病んで別居しているのだ、これ以上無用な心配はかけまい。


 ワタシは無言でスマホを机の上に置くと、元帥ポーズで頭を回転させる。

 とりあえず兄貴がどうしてあんな事になってしまったのか、まずしっかり話をしたい所だが・・・。


『兄貴は何故あんなに恥ずかしそうにしていたのか』


 正直あんなモジモジされてしまっていては話も出来ない。

 元は男なのだし、そんな・・・いや、そうか。


「兄貴はあのクソダサTしか持って無かったからな、遂に恥じらいを持ってくれたか!」


 これは光明を得たのではないか?

 そうと決まればする事等決まっている!


 身軽な短パンとタンクトップに着替えると、軽くストレッチを開始する。

 確か幼馴染の女子が、隣町にはオシャレな女性服が多いと言っていた。

 隣街まではここからだと53㎞くらいか?

 軽い運動にはもってこいな距離だ。


 ワタシは軽いステップを踏みながら家を飛び出す。


「右よし、左よし、筋肉よし、では兄貴、行ってきます」


 兄貴の部屋のカーテンが少し揺れたような気がするが、この時間帯に女子はいないし気のせいだろう。


 ◇


 という訳でやって来ました隣町のショッピングモール、なるほど、近所とは比べ物にならない程の店の数だ。

 軽くスポーツドリンクを流し込みながら、女性服の店を物色する。


 しかしここに来て予想外のハプニングが発生する。


「これは参ったな、女性物の服等気にした事もないぞ」


 それに先ほどから変に目立ってしまっているのは気のせいだろうか?

 いや、確かに男一人で女性服の店を物色していたら、怪しまれるのも通りか。


 ならやめるか?否である。

 今を逃せば兄貴の絶望的ファッションセンスに革命を起こす機会を失ってしまう。


 ワタシは店の端に移動し、ラーニングを開始する。


 レースロングT、フレンチブラウス、スリットスラックス、スリープワンピ。

 恐らく最近の流行であろう文字を見つけては、それを着た女性を捕捉、兄貴に似合う服を脳内で組み立てていく。


 だがサイズは?男性物と女性物では表記が違うと聞いた事がある。

 ちょうど兄貴に近そうな体系の少女を見つけ、首元のタグを遠目から確認、あのサイズで間違いないだろう。


「あのー、お客様?」

「む、ワタシに何か用ですか?」


 徐々に完璧な思考が組み立てられている中、女性店員に話かけられてしまった。


「その・・・他のお客様から、苦情が来ておりまして・・・」

「おっと失礼、つい服選びに夢中になってしまったようだ」


 不審人物を見るような目を向けて来る店員に言われ周りを見てみると、確かに今にも通報しますといった雰囲気が漂っている。


「いや申し訳ない、兄・・・妹の服を選んでいまして、如何せん女性服に興味がなかったので参考にさせてもらっていたのですよ」

「は・・・はぁ・・・」


 兄の服を探しに来る場所でも無かったので、咄嗟に妹という事にしておく。


 尚も冷たい目を向けられるが、気にする訳にはいかない。

 少し話題を逸らさなければ、最近友達になりつつある警察に突き出されかねない。


「そうだ!店員よ、折角だから妹の服を選んでくれないか?」

「それは構いませんが・・・本人がいらっしゃらないとサイズ等が・・・」

「身長は141、上から73.52.74、体重は35くらいだ」

「へ?」


 ワタシの発言に店員が目を丸くする。

 何か変な事を言ってしまっただろうか?


 不思議に思っていると、店員が言いにくそうに顔を引き攣らせる。


「その・・・妹さんはよくそこまで教えてくださいましたね・・・」

「いや、ワタシが見てサイズを目測しただけだ」

「そんな目測って・・・」


 一層顔を引き攣らせる店員に、仕方ないので証明してみせる事にした。


「例えば店員、貴方は身長159、上から85.57.87体重は・・・」

「お客様、セクハラで訴えますよ?」


 ウフフと裁縫針を喉に突き付けられてしまった。

 何か間違えてしまったか?でなければこんなに見てわかる程に怒りオーラが出る事はあるまい。

 正直ここまでの殺意をぶつけられたのは人生で何度目だろうか。


「コホン、サイズに関してはわかりました」


 目が笑っていない店員さんが距離を取ったので、ワタシは安堵の息を吐く。

 女性というのはいきなり怒り出すからよくわからない。


「それで、妹さんは普段どんな服を着ておいでですか?」


 だがそんな状態でもちゃんと仕事をする辺り、この人もプロなのだろう。


「そうですな・・・何の変哲もないTシャツを着回していますな」

「・・・」


 店員さんが絶句してしまった。


「だからせめて何か一着でも買ってやろうと思っているのですが」

「一着だなんてとんでもない!!!!」


 再度詰め寄られ、その形相に思わず怯んでしまう。


「良いですか!女の子という物はですね!」


 それから店員さんの説教が開始、店の中で正座をさせられ、最終的に5セットもの服を買うハメになってしまった。

 これでも足りないらしいので、今度は妹さんも連れてくるように!と言われてしまった。

 女性服とは奥が深い物である。


 店員さんに解放され、両手に紙袋をぶら下げながら帰路に着こうとした所で、ワタシは重大な事に気付いてしまった。


「そうだ、服も大事だがパンツやブラが無くてはいけないではないか!!!」


 しかし下着に関しては、男友達からよく聞かされているから悩む心配はない。

 とりあえず白が正義と言っていたので、それを買うとしよう。



 ・・・・数分後、ランジェリーショップの床に正座させられる事になったのはまた別の話である。




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