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踊る騎士団~騎士団長はツライよ~  作者: 東野 千介
第一章 はじまりのとき
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長い一日

 レックスのとの会話は短い時間だったがエイリアは満たされたような気分になる。


 レックスにはエイリアがリサリア王宮に来てから何かと世話になっているのだ。

 慣れない王宮での生活においてそれは助けになっていた。


 ―レックスがわざわざ激励にきてくれるくらいだ。どうもただの盗賊退治じゃないらしいな。王もそこまで親バカではないということか。


 よくよく考えてみればそもそもリサリア王国に盗賊団が入り込んでいる事自体おかしい。


帝国が崩壊してからの二十三年、旧帝国圏の治安は悪くなる一方だがリサリア王国を含めて地方の覇者と見られているいくつかの国では帝国時代と変わらぬ、いや、それ以上の治安のよさを保っている。それらの国は自国の安全を保障する事で民衆を安心させ、その安定した統治を示す事でその地方での自らの覇権を示しているといっていい。


悪い見本がある。最後の皇帝が暗殺されて偽帝がたった〔偽帝の乱〕の後、その混乱に乗じて近隣諸国を滅ぼして急速に勢力を拡大した小国があったが無理な軍事行動を重ねた結果、民衆に重税を課し、それに耐えられなくなった民衆は田地をすて盗賊となり国は荒れた。そして短期間で旧帝国の五分の一を支配するほどに成長していたその国はもうない。王は家臣に殺され、その王を殺した家臣も民衆に殺され、結果その国は四散した。それはこの戦国時代における最もおろかな国の例として語られている。


これ以降各国の政策は侵略よりも自国の安全を高めるように守勢に入っていくが、それでも盗賊の数は減るどころか増え続けている。盗賊の数が増える理由があるからだ。


国が滅ぶからだ。


守勢に入ったといっても、小国は大国に併合され、老国は新興国に攻められた。その滅んだ国の貴族、民はそのまま征服者に従う者もいれば、国を飛び出す者もいる。国を飛び出したところで食べる当てもなくやがてそれらは決められた道を歩むように盗賊になるのだ。


 この大量に発生した盗賊たちも入り込んで暴れる国はよく見極めている。力のある国に入り込んでしまえば小蝿のような盗賊たちは一打ちに撃滅されられるからだ。隙があり、なおかつ裕福な国を狙って略奪し、立ち去る。その荒らされた国は衰退し、他の国に滅ぼされ、また新たな盗賊が生まれる。


 とにかくこの戦国乱世の特徴の一つは外敵との戦いよりも、内部の敵を抑える事が肝心であったといっていい。そしてリサリア王国は〔偽帝の乱〕以降一度も国内に盗賊の侵入をゆるしていない。盗賊の方がリサリア王国を避けていたのだ。


―リサリアに盗賊が入り込んでいるとしたら今のリサリアは勢力が弱まっていると思われているのか?いや、やはり入り込んでいるのは盗賊にみせかけた他の者か。盗賊の国を見る目はある意味どんな戦術家よりも正確だ。


間違っても今のリサリアの勢力が弱っていると判断することはない。そう考えるほうが自然だ。


 エイリアは一瞬真剣な顔になるが、ふっと力を抜く。悩んでみても仕方のない事だ。自分は与えられた任務をこなすので精一杯なはずだ。


「なんにしても長い一日だったよ」


 こうしてエイリアの第二近衛騎士団就任以来もっとも長い一日は終わったのだった・・・。

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