帰路へ
「素直なところがあるではないか。それにしてもなかなかの腕だ。どうだ、私の部下にならないか」
相手が武器をもっていない事に安心したのかイーズラが猫なで声を出すが、影は答えない。
「そうか。残念だな。・・・ならば、死ね!」
イーズラが黒い影に切りかるが、それをかわした黒い影、エイリアは袖口から一瞬にして黒い刀身のナイフを取り出すと一閃する。
「は、はああああああああああ」
イーズラは鼻先に走った激痛に身悶える。
イーズラの鼻は覆面ごと根元から切り飛ばされていた。
「おおおおお、私の鼻が、鼻がー!」
イーズラは鼻を押さえてうずくまっている。
これこそエイリアがカルマを仕留めた技、リサリア王家の隠密であるサスケの祖父から教わった短剣暗殺術だ。
エイリアは平民として暮らしていたのだ剣術を習ったのは王宮に呼び戻されてからだ。
そのため懸命に努力したが他の幼少期から剣術を仕込まれた騎士たちにその腕前は比べて劣っていた。
しかし、エイリアに自らを守る手段がないわけではない。
エイリアを守るためにサスケの祖父は王家の隠密が覚える短剣暗殺術を教えたのだ。王家の者を守るための短剣暗殺術を王家の者であるエイリアが覚えたのは皮肉だったが、正式な剣術を使えないサスケの祖父にはそれしか方法はなかったのだ。
―ま、これでイーズラも余計な夜遊びをすることもなくなるだろう。
イーズラのわめき声を背にエイリアは帰途につく。
「お見事です。エイリア様」
男達に追われていた少女が戻ってくるとエイリアのすぐ後ろを歩き出す。
「サスケもご苦労だったね。さあ、帰ろうか」
「はい。帰りましょう」
その後二人は無駄話をする事もなく歩いて城にもどっていたが、エイリアがサスケに言うでもなくつぶやく。
「・・・こんな事をしてもただの自己満足だな」
今はこんな小物を斬って憂さ晴らしをするしかない自分にエイリアは苛立ちを感じた。
サスケはそんなエイリアを励ますように答える。
「それでも、この先あの者たちのくだらぬ喜びのために死ぬ者はいなくなったはずです」
「辻斬りの犯人だとわかっていても正式に処罰する事のできない自分の無力さと、上位貴族の特権に嫌気が差すよ」
もっといい方法がなかったかとエイリアは思うが、思い浮かばなかった。
―いっそのこと殺しておいたほうが・・・。
エイリアの表情が厳しくなっていたのだろう。サスケが心配そうに見上げてくる。
「エイリア様。あまり無理はしないでください。あなたがこの国のためになることを望むならまだ消えるわけにはいかないのですから」
「そうだな。あせらずやる事にするよ」
エイリアはサスケの頭にポンッと手をやると、帰途に着いたのだった。
思っていた着地点とは違ってしまいましたが一応これで完結です。
最後までお読みいただきありがとうございます。




