闇
影が消えた場所に向って一人残ったリーダーの男は剣を構える。影は魔物などではない。黒装束に身を包んでいたが確かに人間の形をしていた。
人であればそうそう剣では引けをとらない自信がリーダーの男、イーズラにはあった。
「この私を誰だと思っているのだ。貴様のようなゴミくずは声をかけることすらできぬ身分の人間なのだぞ。私になにかあってみろ。このあたり一帯をまるごと焼き尽くすことになるぞ」
しかし、影からの返答はない。
「脅しではないぞ。私がここに来ていることを知っている者はいる。私が帰らねばどうなるかわかっているのだろうな」
イーズラの声がむなしく闇の中に響き渡る。
気配を完全に絶っているのか、イーズラの五感を研ぎ澄ましてもまるでわからない。
―気配どころかさきほど近づいてきた時も足音すらしなかった。よほど特殊な歩法を身につけているのか?
構えた剣を影の消えた方向にむけたままイーズラは考えをめぐらす。
集中しているイーズラに倒れている四人のうめき声がかすかにきこえる。
―血のにおいはしない。わざと殺さないようにしているのだな。
あれほど圧倒的な技量を持っている影がしとめそこなう事は考えにくい。
しかし、無様に倒れている四人の部下を見ると無性に腹が立ってくる。
―役立たずどもめ。この俺を守るどころか真っ先にやられるとは。戻ったら覚えていろよ。
一緒に辻斬りを楽しんだ仲間だがイーズラにとっては自分の盾になるためだけに連れてきた者たちだけにそのふがいなさに腹がたった。
「何が目的だ。こそこそ隠れず出てくるがいい」
そんな言葉で出てくるとは思っていなかったが、暗闇から黒装束の者が出てくる。顔はイーズラたちと同じように覆面をしているので男か女かもわからない。そして武器はもっていないようだった。




