獲物②
少女が逃げられないように男達は剣を抜いてまわりを取り囲む。
「今から死にたくなるような事をお前にするが心配することはないぞ。全てが終った後には俺たちが責任をもってちゃんと殺してやるからな。はははっ」
リーダーの男の耳を塞ぎたくなるような冗談に皆同意して笑っている。
その笑い方からもリーダーの男に従っている男達もいやいややっているのではなく、この〔狩り〕を楽しんでいるのがわかる。
やがてリーダーに促されて黒覆面の一人が抜き身の剣を片手に少女に近づいていく。
その手をは震えているがそれは興奮のためで息もあらい。
これからのお楽しみに心躍っているのだ。
「騎士たる者、人の斬り方をわすれてしまってはいかんからなあ。その練習台になれることを光栄に思うがいい」
騎士とは思えないほど薄汚い心をした男の手が少女に触れる、そう思われた瞬間、少女を取り囲んでいた男の一人が声もなく倒れた。その異変に他の男達が気づいた時にはさらにもう一人。
残った三人はなんとか平静になって油断なく剣を構えるが、敵の姿はどこにも見えない。
二人を倒した後に一瞬にして闇に同化してしまった敵の姿を見分ける事ができない。
「なんだ?今のは」
「わかりません。魔物のようにも見えましたが・・・」
「バカな事を言うな。そんなものがいるはずがなかろう」
五人の中でリーダーの男が甲高い声でわめく。
今までは下町の中で獲物をしとめてきたが、今回は森の奥深くまで追いかけてきたために魔物が出てもおかしくないような雰囲気のある場所にきてしまっていた。
「あ、こいつ!待たんか!」
突然の襲撃者に男達が騒いでいる隙をついて少女が逃げ出したのを残った手下の一人があわてて追いかける。
こんな事態になってもまだ獲物の事から頭が離れていないのはまさにあさましさの表れだ。
陣形を崩すのを嫌ったリーダーの男が「よせ!」と制止しようとするがその時には手下の身体は崩れ落ちるように倒れていた。
少女を追いかけようとした男を倒した黒い影はすばやく間合いをつめると、もう一人残っていた手下を倒して、再び闇の中へ消えていく。




