獲物①
イーズラが黒い影に襲われたという日の深夜。
王都のはずれにある下町。覆面をした五人の男達が歩いている。
男達の格好は黒づくめで地味ではあるが、高級な素材で作られた衣服のせいで覆面をしている以上にこのような下町にいるのが不自然だった。
黒づくめ達がこの時間にこの場所に現れるのはこれで三回目だ。
彼らにはある目的があり、そしてこの日もその目的のものを見つけていた。
「今日の獲物はいいですね」
「あせるなよ。逃してしまっては元も子もなくなるぞ」
リーダーらしき男の声にも取り巻きたちは真剣には答えない。
「わかっております」
男達は獲物に気づかれないように声をひそめて楽しそうに笑いあう様子に「仕方のないやつらだ」とリーダーも苦笑いしている。
暗がりの中を歩いている獲物、一人の少女を尾行しているのだ。
少女は男達の尾行など夢にも思わないのか闇の暗さに多少のおびえは見えるものの、小さなランプを掲げて元気に歩いている。
やがて少女が全く人気のないところに来ると、男達はわざと自分達の存在を知らせるように音を立てて歩く。
その音に少女が振り返ると、自分の後をつけている五人の男に気づく。そしてその男達が覆面をしているのを見て小さく悲鳴を上げた。大きな声が出なかったのは極度の恐怖のせいかもしれない。
少女は小走りに、そしてすぐに全力で走って逃げ出した。
この場所でこの時間に男達が少女をつけまわす理由は一つしかない。
少女はそのことがわかっているようだった。そんな事がわかっている少女がこんな夜更けに一人でここにいたのにはそれ相応の理由があるのかもしれないが、そんな事は黒づくめ達には関係なかった。
少女がどんな理由でここにいたにしろ、彼らにとってはただの獲物にすぎないのだ。
男達の息は荒い。少女を追いかけることで疲労したわけではなく、少女を捕え、そしてその後に始まる楽しみに興奮していた。男ではただ斬るだけだが、女には別の楽しみがある。
〔狩り〕は三度目だったがこういう獲物はめずらしかった。ことが発覚しないように夜が更けた後にひとけのない場所で行っていたので、獲物の種類は限られていたのだ。今まで斬った獲物は三人とも男だった。
少女はそれほど足が速くなかったが、男達はいたぶるように追いかけていたので少女を追い詰めたのは下町からもかなり離れた森の中だった。




