レナ王女
ケット王国からレナ王女が輿入れする日、クーはエイリアの執務室に来ていた。
レナ王女の行列はリサリア王国の国民に対する顔みせのために城下町の中央通りをゆっくりと行進している。
「ここからならよく見えるもの」とレナ王女の行列を見物するのにエイリアの部屋に来た事をクー姫は理由をつけていたが、要するにお兄様の花嫁をエイリアと一緒に見たかったらしい。
「レナ王女、綺麗ねえ」
クーは憧れるような目でレナを見てため息をついている。それにはレナの美しさだけでなく、花嫁に対する憧れもあるようだ。
「そうですね。相変わらずの美しさです」
「そういえばエイリアとレナ王女は同じバルス大学の学生だったのよね」
相変わらず、とエイリアが言った言葉が気になったのかクー姫が確認してくる。
「ええ。当時もきれいでしたが、よりきれいになってますね」
「エイリアってああいうのがタイプなの?」
「一般論ですよ」
クー姫の質問に嫉妬が含まれていることに気づいてエイリアは苦笑する。
「あ、こっち見たわ。あれ・・・レナ王女なんだか浮かない顔じゃない?」
「そんな事ないですよ。笑顔です。こちらに来るまでにいろいろごたごたもあったようですし、少し疲れているのでしょう」
エイリアに説明にクー姫も思い出したように言う。
「そういえばレナ王女お付の騎士がこちらに来る少し前に行方不明になったんですってね。その騎士はレナ王女についてこっちに来る予定だったんでしょ。でも、結局レナ王女が出立する時になっても現れなかったらしいのよね。・・・エイリアはその騎士の事は知っているの」
「名前だけは聞いたことがあります。ケット王国で最も高名な騎士ですからね。たしか大陸十剣客の一人に数えられていたとか。大陸十剣客といえば国に仕えていてもいつでも自由に出国する権利を認められている者が多いとききます。どこかに修行の旅に出たのかもしれませんね」
「修行の旅かあ。それにしても黙っていなくなるなんてよくないと思うわ」
クーは自分の騎士であるエイリアが黙っていなくなったら許せない、と自分に置き換えて考えている。
「修行の旅は私の想像ですよ。もしかしたらはケット王国は大陸十剣客に数えられるほどの騎士をレナ王女のお付としてみすみす我が国に渡すのが惜しくなって失踪したフリをさせているのかもしれませんね」
「そんなのおかしいよ。だってお兄様とレナ王女が結婚するのにまだリサリアに対して警戒心を持ってるなんて変よ」
「そうですね。たしかにおかしいですね」
クー姫の幼い外交感覚にエイリアは好感を覚える。
―クー姫はこれでいい。この姫までわけ知り顔に複雑な外交を考える必要はない。
外交においてクー姫のような考えの者が一人でもいるのは悪い事ではない。
しかし、みんながみんなクー姫のような考えではその国は滅びるだろうから、しっかりと外交を考える者がいるという事が前提条件になる。
―わが国においてはその心配はないがね。
エイリアは英邁な王とそれを継ぐレスタークス王子の英雄の資質に満足していた。




