収支②
ベルトロッサがイーズラ一派のためにした汚職は単にイーズラ達を儲けさせただけではなかった。いや、イーズラ達は気付いていないが彼らはある意味では損をしている。
ベルトロッサがイーズラ達に提案したした不正はこうだ。
私的な商品を騎士団の輸送部隊を利用して運ぶことで、輸送代を浮かせてその分商品の利益を水増しする。
その商品の購入代金を複数の騎士達に出資してもらい、ベルトロッサが商品の調達、販売を引き受けて、商品を売った利益を出資した騎士達に出資した金額に応じて渡すというものだ。
今回出資した騎士達イーズラとその取り巻きはベルトロッサの〔働き〕に満足していた。イーズラ達がはじめに計画していた不正で得ようとした金額と同等の利益があったからだ。
しかし、これには裏がある。
イーズラ達は自分達の出資した金額よりも多くのお金が返ってきたのでもうけたと思っているが、実は本来の利益よりもかなり少ない。
ベルトロッサは莫大な資金を得たことにより、大量の商品を買い付けて売りさばくことに成功しており、それの利益のほとんどを近衛騎士団の正規の運営資金にまわし、その残りをイーズラ達に渡したに過ぎない。
つまりイーズラ達は本来ならもっと利益を得ていたのだ。
もっとも、この不正はベルトロッサの商才があってのことで、そうでなければ大量の商品を仕入れてもまともに商品が売れなくて損をするのが関の山だ。
損をするどころか輸送代金を余分に差し引いた金額を渡してもイーズラ達を満足させるほどの売り上げをあげたのはベルトロッサの手腕が卓越したものだからだ。
ベルトロッサのした事は確かに汚職だ。
騎士団の輸送部隊を使って商売をしているのだから。
だが、そのおかげで汚職で金儲けが出来なかったイーズラたちの上位貴族不満は納まり、騎士団の輸送費も抑える事ができた。
しかし、エイリアはこのことを知らない。サスケに調べさせればすぐにでもわかるだろうがベルトロッサがしたことを明るみにする気はなかった。はっきりとわからなくてもベルトロッサが危ない橋を一人で渡ったことは明らかだからだ。
せめて不自然な輸送費を調査しない事でエイリアは自分にも落ち度をつけておこうと思ったのだ。
そうすることで危ない橋を一緒に渡った事にしたかった。
だから輸送費を安くしたこともそのままリシューの手柄とした。
「よくやってくれた。これなら私も王に報告がしやすいよ」
「いえ、それはベルトロッサ殿がした事です」
リシューはあくまでもベルトロッサを立てる。
「だが、輸送部隊の責任者は君だ。まあ、ベルトロッサの事も考慮しておく。ご苦労だったね」
エイリアはこう言ってリシューを下がらせたが、輸送費に関してはベルトロッサの手柄にはしない。ベルトロッサ本人もそれを望んでいないだろう。
なにしろベルトロッサは金も名誉も地位も興味がないといった男だ。
―あ、でも女がいるのか。
エイリアはなんだかんだとごまかしてきた女の子をベルトロッサに紹介する話を本気で考えてやろうかなと思うが、あいつは自分で探すかと思い直すのだった。




