決着
対峙する二人の様子は対照的だ。剣を抜いていないエイリアが平然としているのに対して剣を構えているカルマはやや緊張を隠せない。
ライサーやベルトロッサを圧倒した腕を持つカルマだったが形容しがたい威圧感をエイリアから感じているのだ。
―何を迷うか。刺し違えても斬る。
カルマはそう決心しようとしたが、それでは意味のない事にきづく。エイリアを殺しても〔ケットの炎〕を回収できなければ意味がない。
それどころか自らの死体を残す事でカルマの素性がばれてしまえばケット王国とリサリア王国に大きな亀裂を生じさせてしまうだろう。
そんな事になったらレナ王女とレスタークス王子の婚約も解消されてしまうに違いない。せっかくリサリア側に被害を出さないように配慮して戦っていたのが水の泡になってしまう。
―斬ってから考えるか。
カルマは頭の中に浮かんでくる余計な考えを捨てた。
カルマはさすがに一流の騎士だった。迷いを捨てると後は一個の剣士になることができた。
「無抵抗の者を斬るの事わしにはできぬ、抜くといい」
カルマは剣士としてエイリアに抜刀を促す。
不意打ちする方が兵法として強い、そういう主張もあるだろうがカルマのような高みに達しているの剣士になると不意打ちをしない方が強い、のだ。
「抵抗はする。だけどこのままで立ち合う。遠慮する事はない。私はすでに構えている」
エイリアは親切にも自分が戦闘状態に入っていることをカルマに教える。
―剣を抜かないのか。抜刀術か?しかし・・・。
カルマは油断なく構えながらエイリアの意図を探る。
東方の剣技である抜刀術は剣を抜かない事に要諦があるというが、エイリアの腰にぶら下がっている剣は装飾がごてごてと付いていて抜き打ちの速さを重視したものではないのは一見してわかる。
―魔法か?いや、魔法は距離があってこそ有効なもの。これだけ接近していれば剣には勝てん。
やはり剣だな。しかし、わしが感じている威圧感は剣の技量だけで来るものではない。黒髪黒眼のあの姿が見るものを恐れさせるのだ。それさえ恐れなければ、やれる。
カルマは剣の腕では自分が上だと確信する。
その見立ては間違いないだろう。ライサーが言っていたようにエイリアの騎士としての剣術は並みだ。
そして・・・。
一瞬の間に二人の体が交錯する。
やがて、一人がドッと倒れる。
立っているのはエイリアだ。
未だにエイリアの剣は鞘に収まっている。抜かれた様子もない。
しかし、カルマの心臓は見事に刺し貫かれていた。
「悪いね。これは譲れないものなんだ」
エイリアはもはや物言わぬ者になったカルマに〔ケットの炎〕を見せながら一方的に話しかけたのだった。




