宝玉
エイリアが取り出したそれはまさにカルマが捜し求めていたそのものだったからだ。
「ああ、言わなくていいよ。その反応でわかるから」
エイリアはカルマの心の内を決めつけると、そのまま続ける。
「これは〔ケットの炎〕。ケット王家の女性が永遠の愛を誓った相手に渡す物だ。
どこで間違ったのか君たちはこれを所持しているのがかつてバルス大学に通っていたこの地方の平民だと思っていたんだね。
ま、あながち間違いでもないかな。私も昔はこの地方の平民として暮らしていたのだからね」
「貴公・・・まさか」
「そう、これは私の物。私がバルス大学に在籍していた時にレナからもらった物だ」
エイリアはつい先日リサリア王子レックスとの婚約が成立したばかりのケット王国の王女、レナの名前を出す。
「それをこちらに渡してもらえないか?もはや、貴公には必要のないものだろう」
「確かに私とレナが結ばれる事はもうない。しかし、これを手放すことなどできない相談だな」
「そのレナ様の事を真に思うならば貴公はそれを手放すべきだろう。それが貴公とレナ様のためだ」
確かにレナ王女に他に思い人がいるのが発覚すればケット王国とリサリア王国にとって好ましい事ではない。しかもその相手がリサリア王国の者であればなおのことで、誰にだってわかることだ。
しかし、エイリアの答えは変わらない。
「それは出来ない。レナの気持ちはまだあせていない。〔ケットの炎〕がこんなに紅いのだからね」
エイリアの手の中にある〔ケットの炎〕は確かに紅く輝いている。もともとは無色透明の宝玉だがケット王家の者が心から愛する者に渡すことで紅く輝く魔法の品なのだ。
そしてその持ち主に対する愛が消失した時、この宝玉はまた無色透明に戻る。
言葉でなく、宝玉という目に見えるもので愛を表すのは残酷なものだが、この宝玉は決して嘘をつかない。
そして〔ケットの炎〕を受け取る者は命を懸けてこの宝玉を守ることを誓約する義務がある。
エイリアも当然その誓いをしてレナから受け取っているのだ。
「しかし、そのレナ様が返してもらうことを望んでいたらどうするのだ」
「本当にレナの意志で〔ケットの魂〕を返してくれというなら紅く光るままでも返すけど、レナはこの事を知らないだろう。
レナは私が現在リサリアの第二近衛騎士団の団長である事を知っている。もし、君達がレナの意志を受けていれば直接私の所に来たはずだろ。
だが、君たちはそうしないで宝玉の持ち主を探していた・・・。
ということは君たちの行動はレナの意思ではない事は明らかだね」
エイリアの指摘にカルマは黙り込む。まさにその通りだったからだ。




