訪問者
人々の歓声がきこえる。
ヤカ村ではささやかながら盗賊退治の祝宴が開かれていた。エイリアの直轄領であるヤカ村はこの規模の村としてはかなり裕福なので舌の肥えた第二近衛騎士団の騎士達を満足させる料理が出ていた。
騎士達はその返礼としてダンスを披露したが〔踊る騎士団〕といわれているだけあって巧みな踊りを見せて村人を感嘆させていた。もっとも一部の騎士は見世物になるのはごめんだと参加しない者もいた。
宴も終わり、今日一日の疲労で皆が寝静まった深夜にある男がサスケの案内でエイリアを訪ねてくる。
「やあ。時間通りだね。サスケはさがっていいよ」
エイリアはにこやかな笑顔で迎え入れるが男はちらりとエイリアの方を見ただけで挨拶をしようともしない。
サスケは少し心配そうな顔をしていたがエイリアの指示に従ってテントから退出していく。
エイリアはそれを見届けると再び男に向かいあう。
「酒を飲むかい。この村で作られている地酒だがこれがなかなか風味があってうまい」
「遠慮しておこう。そんなことよりも、貴公、なんのつもりであんな芝居をさせた」
「そんな怖い顔しないでくれよ。こっちにもいろいろ事情があってね」
「まあ、それはいい。わしは貴公のいうとおりに死んだフリをした。約束どおりわしの捜しているもののありかを教えてもらおうか」
男は半日前に川に落ちた事を言っている。
エイリアは盗賊団のアジトに攻め込む前にあらかじめサスケを派遣してこの盗賊団の頭目と取引をしていたのだ。『君の欲している物のありかを教えるかわりにこの戦いで死んだふりをして欲しい.。そしてできるだけ騎士団の人間を傷つけないで負けてくれ』と。
「その前に少し話をしないか。そうだな。名前くらい教えてくれないかな。知らないと話にくいからね。もちろん偽名でかまわないがね」
はなから本名を言うはずがないとエイリアは決め付けている。
「・・・カルマ」
男はエイリアから視線をはずさずにつぶやく。
「そうか。それでは話をしようか」
「・・・?」
あきらかに空気が変わった事を感じてカルマはわずかに眉をうごかすが、エイリアは落ち着いて説明する。
「ああ、心配する必要はない。魔法結界を張っただけだよ。これでこのテントには誰も入ることはできないし、これからする話はだれにも聞かれることはない」
「・・・やはり魔法が使えたのか。貴公が罠魔法を見破ったと聞いていた。この戦いでは一度も貴公自身は魔法を使わなかったから魔法が使えるかどうか怪しんでいたのだが、どうやら一杯食わされたようだな」
「私が魔法を使える?それはどうかな」
エイリアはカルマの問いに疑問で答える。
「まあよい。それで話となんだ」
カルマは早く用件を済ましたいのかこだわらない。
「まず、君達の素性だがただの盗賊団ではないね。正規の騎士、それもかなり熟練の者たちだ。それは間違いないかな」
エイリアの質問にカルマは露骨に不快感をあらわにする。
「そのような事を答える義務はない」
「しかし、君達がこのヤカ村を襲ったのはただの盗賊団ではない事をあらわしている」
「そもそもなぜ、わしらが襲う村がわかった?」
今度は逆にカルマが質問する。
「一見無作為にみせかけていたが、君たちが襲っていた村はこの地方でバルス大学に通っていた者がいた村だ。私は自分が通っていたからすぐにピンときたよ。そして残っていたのはこのヤカ村だけだった。簡単な消去法だ。そして君たちは絶対にヤカ村に来なければならなかった。これを見つけ出すためにね」
エイリアが紅い宝玉を懐中から取り出すとカルマの顔色が変わった。




