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踊る騎士団~騎士団長はツライよ~  作者: 東野 千介
第四章 ゆずれないもの
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盗賊の頭目

『わああああ』


 火に追われて盗賊たちが次々とアジトにしていた廃墟から出てくる。


 追い出された盗賊たちに選ばれた騎士達が果敢に向っていく様は〔踊る騎士団〕と蔑まされていた者たちとは思えないものだ。

 しかし、向っていく勇気はあっても冷静ではなく、無我夢中で戦っているだけなので盗賊たちが相変わらず騎士達を傷つけないように手加減しているのに気付いたものはいなかった。


 盗賊たちは騎士達によって次々に捕えられていったが、頭目らしき男だけは別格だった。


頭目は突撃隊の騎士達を殺しはしなかったが、みねうちで手際よく気絶させていく。


 その容姿は盗賊の頭目にしては落ち着いた雰囲気の中年の男だ。パッと見た感じでは目を開けているのがわからないくらいの薄目だったが、その戦い方は優雅ですらあった。


そこへ突撃隊の中でももっとも剣の腕が立つ三人が向っていく。


 「くらええええ!」


 盗賊の頭目に真っ先に剣をつけたのはライサーだ。ライサーの剣は並みのものではないが頭目は余裕を持ってそれを受け止めて、すぐさま攻勢に転じる。


 数回打ち合っただけで一気にライサーが押されだす。


 ライサー危うしとみたベルトロッサがそれに加わる。ベルトロッサもまた非凡な腕前をしているが、頭目はその二人を同時に相手していてもまだ余裕がある。


 ―なんて男だ。あの二人相手にあそこまで戦えるとは。これはわしも参加せねば。


 さらにプロビオがそれに加わるとようやく、頭目にもあせりがみえる。第二近衛騎士団で五本の指に入る使い手三人が相手ではさすがにあしらいかねている。

 しかし、まだ余裕がある。頭目があしらいかねているのは三人を傷つけないように気を使いながら戦っているからで、剣を交えている三人にはそれがよくわかっていた。


 一方、同じ突撃隊でもイーズラは頭目との戦闘に加わろうとせずに、傍観を決め込んでいた。イーズラはこの頭目の実力が現在の自分達よりもはるか遠くにあることを見抜いていたのだ。


 この点、イーズラの剣才は卓越していると言っていい。もっとも、ライサー達は頭目と自分達の実力差を見抜けなかったわけではなく、わかった上で挑んでいるのだ。


―こいつはまだ本気じゃない。本気でやれば俺達三人でも敗れるだろう。実力を出し切っていないでこの強さか。世界はひろいぜ。


 ライサーはベルトロッサに視線を送る。


 ―確かにこのままじゃあ、倒せないよね。


 ベルトロッサもそれに目で応えている。


 プロビオはその二人の様子に気付くと、間合いを少し開ける。この二人の若者にかけてみようと思ったのだ。

 次に二人が視線を合わせたとき、ライサーと位置を入れ替えたベルトロッサが頭目の殺意のない剣を一人で食い止める。殺意がないのがわかっているので受けの技に長じたベルトロッサならなんとかそれに合わせることが出来る。

その隙にライサーは必殺の一撃を放つ構えをするために距離をあける。


 「くっ!」


 ガキン!


 ベルトロッサの右手の長剣が真っ二つになる。


 一対一になったことで武器破壊という高度な技を頭目が仕掛けてきたのだ。


 しかし、両ききであるベルトロッサは瞬間的に左手で腰の短剣を抜いてそれを投げつつ前にでる。


 短剣はあっさりかわせたが丸腰のベルトロッサが後退せずに向ってきたことに頭目は一瞬の判断に迷う。

 切り捨ててしまえば簡単なのだが、頭目はそれをすることができない。


 その一瞬の隙を見逃さなかったライサーが必殺の突きを放つ。


 タイミング的に反応できるはずのないその一撃を頭目は見事に受け止めてライサーを驚愕させたが、


 「ぐうっ」


 ベルトロッサの手刀によってその手を打たれて剣を取り落とす。ライサーの攻撃に反応するのが精一杯でベルトロッサの一撃を避けることができなかったのだ。


 丸腰になった頭目を三人は慎重に追い詰めていく。剣をもたなくても油断できる相手ではない。


 やがて頭目は逃げ場を失い背後には数十メートルはあろうかという谷川があるだけだ。


 「もう、後がないぜ。大人しく捕まるんだな。なにっ・・・!」


 ライサーがあっけにとられた声を上げる。


 頭目は崖から足を踏み外して川に落ちたのだ。


 あっけない最後だった。

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