尋問
次にエイリアは医療テントを見て回る。
この医療テントにケガ人をスムーズに運べる体制をつくる事にエイリアは最も気を配っていた。
プロビオの報告にあったように幸い大きな怪我をした者はいないようでズース達魔法兵が落ち着いて治療をしている。
「どうだ?怪我人の様子は」
「たいしたことありませんよ。わざわざ魔法を使うまでもないのがほとんどですね。ま、それが仕事だからやりますが」
聞こえよがしにいうズースに、治療を受けに来ていた騎士達は嫌な顔をする。
「そういうな。彼らは戦ったのだ。私の隊のようにまったく戦いもしなかったら怪我などしないからな。」
エイリアは自虐的な言い方で傷ついた騎士達を庇う。戦いで怪我をしている騎士には庇う価値がある。この第二近衛騎士団では特にそれが顕著だ。
「それで団長はなんのようです?」
「捕虜の尋問をこれからおこなうんだが魔法の使える者を一人貸してもらおうと思ってな。治療に差し障りがあるのだったら後で構わないが、どうだ」
「いいですよ。さきほども言いましたがたいした事ないのがほとんどですから、普通の医者でも何とかなりますよ」
「それでしたら私が〔愚か者の正直〕の魔法を使いましょうか?」
ちょうど一人の騎士の右腕の治療を終えたユニが名乗りを上げる。
〔愚か者の正直〕は相手の自我を一時的に奪って、こちらの質問に嘘偽りなく答えさせる魔法だ。
「そうですね。お願いしましょう。こちらへついてきてください」
―できればその魔法を私の騎士団の連中にも使ってもらいたいよ。
エイリアはそんなことを思いながら捕虜の収容テントにユニを伴っていく。
捕虜のいるテントにはライサーが責任者として見張りに立っていた。
「ライサー、捕虜を一人連れてきてくれ」
「できれば意識が朦朧としているか、気絶している状態の方がいいです。そのほうが魔法の効きがよいので、眠そうな人を連れてきてくれませんか」
ユニが言い終わらないうちにライサーが捕虜を集めているテントの中から一人の男を片手で抱えてくる。
「ほら、気絶させてきたぜ」
どうやらライサーはわざわざ気絶させてきたらしい。
「乱暴だな」
エイリアは顔をしかめるがそれ以上はいわずにライサーの行いに眼を丸くしているユニに向き直って言う。
「それではユニ嬢。魔法で彼の口を割らせてくれないか」
ユニはコクンとうなずいて呪文の詠唱を始める。
―魔法が使われるようになって戦国の世が激化したという見方もあるが、確かに便利な技術だな。拷問するよりはずっと人道的でそこから得られる情報は確実だからな。
そんな事を考えながらエイリアはユニが魔法をかける様子をみていたのだが、かすかな違和感を覚える。
―空気が変だ。この感覚は・・・。
「いけない!」
エイリアがユニに飛びついて盗賊から引き離すと同時に盗賊の体が爆発する。大きな爆発ではなかったから自爆した盗賊以外にはほとんど怪我はなかったが、まわりにいた者数名が軽い怪我を負ってしまった。
魔法をかけるために一番近くにいたユニはエイリアに庇われたおかげで無傷だ。
「あ、あああ・・・」
ユニは顔面蒼白で言葉にならない悲鳴をあげている。
今までも戦いで傷ついた騎士たちを治療してきたが、原型を残さないほどバラバラになった死体を見たショックは大きかった。
「見ない方がいい。サスケ、ユニ嬢を医療テントへ。ついでに治療が終わっていたらズースとフラハを呼んできてくれ」
エイリアは腕の中でガタガタと震え続けているユニをやさしくサスケに引き渡すと、爆発した盗賊の体があった場所を見る。
―これはひどいな。秘密を守るためにここまでするのか。やはりただの盗賊団じゃない。そしてこの爆発はおそらく本人の意思じゃない。
エイリアは自分が相手にしてる者たちの正体に不気味なものを感じるのだった。




