眠る騎士団
盗賊団襲来の報告から三時間後、エイリアは両腕を組んで〔存在の意味が理解できない者たち〕を目の前にして疲れた顔で椅子に腰かけている。
―まったく期待はしていなかったが、これほどとはな。
あきれるとともに怒りが収まらないエイリアはようやく集まってきた騎士たちをにらみつけている。
未だに寝ぼけているのかあまり悪びれた様子もない者もわずかにいるが、ほとんどの者は直立不動で立っている。
「私は警戒態勢で休むように言ったと思っていたが思い違いかな」
騎士たちは誰も答えない。その格好もひどいものできちんと装備されていなくとも鎧をつけている者はまだましで、中にはパジャマにナイトキャップといった姿の者もいる。
「知らせがあってから三時間もたってようやくご到着か。ずいぶんとのんびりしてくれたものだな。君たちは一体どこにいたのかね。私はこの村に待機しているように言っていたはずだが、よほど遠くにいたのだろうね」
騎士達が村の近くにテントを張っていたのを知っていながらこういっているのだ。
「私は装備を整えていたのですが」
一応まともに全ての装備をしている騎士が答えるが、
「三時間もかけてか?」
エイリアに冷たい言葉をかけられて目を伏せる。
リサリア王国の騎士の装備は儀礼用の物は全て装着するのにそれなりに時間がかかるが、戦闘用の物はすばやくつけられる作りになっている。それ以前に盗賊討伐に来ていて戦闘服で寝ていないことが信じられない。子供じゃあるまいし、そんな注意をする必要はないとエイリアは思っていたのだ。
―こいつらにはナイフとフォークの持ち方あたりから指導しなければいけないのか。
「他の二隊がいたからいいようなものの、そうでなかったら今頃我々はこの国、いや、大陸中の笑いものだ。村を守るために待機していたにも関わらず盗賊団が村を散々荒らしまわった後に引き上げてもまだ気づかすに眠りこけていたまぬけな騎士団としてな」
そう。もうすでに盗賊団は引き上げた後なのだ。
いくらエイリアが上位貴族である彼らに気を使っていてもそれには限度がある。今回の事はその限度を完全に超えているのだ。
盗賊団を討伐に来ていて、肝心の盗賊団が来た時に眠ったままで、盗賊団が去った後に起きてくるようでは意味がない。まるで民衆が好む滑稽話のようだ。いや。滑稽話でもあまりに現実離れしているのでこんな話は作られないだろう。
エイリアは自分の隊は大バカの集まりだから下手に盗賊団に立ち向かって怪我でもされたらことだ、どうせなら眠っていてもらいたい、とちらりと考えてはいたが本当に盗賊団が去ってしまうまで眠っていられるとさすがに腹が立ったらしい。
「しかも、その理由が寝ていました、だ。我々は〔踊る騎士団〕などといわれているが、いっそのこと〔眠る騎士団〕とでも改名してみるか」
エイリアは自分でもうまくない事を言っていると思うが、そんな皮肉でもいわないとやりきれない。
あらためて騎士達の表情を見る。
―しかし、こいつらのこの顔はなんだ。ここまで言われても何が悪かったのかいまいちわかっていないようだな。労働なき富を得るのが当然だと思っている貴族根性丸出しだな。
とにかく頭を下げて嵐が通り過ぎるのを待つ騎士達の態度に再びエイリアの雷が落ちようという時にプロビオが報告にやってくる。
―プロビオの報告をこのボンクラどもの前できくわけにはいかないな。
エイリアは騎士達を叱るのをやめて退出させる。




