お約束
ヤカ村の周辺にキャンプを張った第二近衛騎士団の騎士達は次第に緊張感をなくしていった。
ヤカ村に来てから四日たったがなんの動きもなかったためで、今朝は村の自然を眺めて詩をつくる会を一部の騎士達がのんきに催していたくらいだ。
そんな中、副長のプロビオがエイリアのテントを訪ねてくる。
これからの方針を相談しに来たのだが、エイリアの答えはあっさりとしたものだった。
「しばらくはここで待っていればいいさ」
「しかし、我々が近くにいたら盗賊どもはこの村にはこないのでは?」
プロビオの疑問はもっともだ。というよりもそこに考えが及ばないほうがおかしいだろう。
しかし、エイリアは自信たっぷりに断言する。
「いや、来るさ。彼らが目指すところはこの村しか残っていないし、彼らにはそんなに悠長にしている時間もない。強行してでも来るだろう。なにしろ私たちは〔踊る騎士団〕だから、盗賊もその辺は心得ているさ」
〔踊る騎士団〕こと、リサリア王国第二近衛騎士団は盗賊程度にも軽くみられているとエイリアは自嘲するが、プロビオが気になったのは、「目指すところはこの村しか残っていない」と「悠長にしている時間もない」だ。
盗賊団の活動に目的や制限時間があるなど普通ありえない。よほど経済的に追い詰められていれば別だが、盗賊は襲いやすい村を騎士団が手薄な時期に襲うものだ。わざわざ騎士団が駐留している村を襲う事はありえない。
それがたとえ〔踊る騎士団〕のようにお飾りのものであったとしてもだ。
「やはりただの盗賊団ではないのですかな?」
「いや、命令は盗賊団討伐だ。それ以外の政治的な判断は前線の軍人はするべきではないよ」
エイリアの言葉にプロビオは少し目を細めるが、それ以上は踏み込まない。
それが長年騎士として勤めてきたプロビオの知恵だ。
「しかし、我々に討伐を命じたわけがわかった気がしますな。今回の作戦はまともな騎士団の者なら疑問に思うような事ばかりですが、幸い我が騎士団には些細な事にこだわらない大物が多いですから、現状に対して何一つ疑問に思ってないようです」
プロビオは朝ののんびりした光景を思い出している。
「本当にな。まあ、ハサミと同じで使いようなのだろう」
二人は顔を見合わせる。なんとなくおかしかったが、声をあげて笑うほどの事ではないので忍び笑いで済ませる。
「しかし、今夜あたり来るかもしれませんな」
プロビオがぽつりとつぶやく。
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「経験からくるカンかね」
「いえ、こういう話をしたときのお約束ですからな」
今度は声にだしてわらう二人だった。




