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幼なじみ

一方そのころエイリアのテントでは・・・。


「エイリア様、お久しぶりでございます」


ヤカ村の村長が挨拶に来ている。


「こちらこそご無沙汰して申し訳ありません」


エイリアも丁寧に対応する。


この70歳近い村長はエイリアがヤカ村にいた頃からの顔なじみで、両親を早くになくしていたエイリアによくしてくれていた。今思えば村長はエイリアの素性をうすうす知っていたようだが、エイリアが村長に感謝しているのには変わりはない。


「なにか困ったことがあったらなんでも言ってくれ」


エイリアはかつて両親をなくした時に村長に言われた言葉をそのまま返す。


「ここはエイリア様の故郷であり、そして領地でもあるのです。もう少し頻繁に来ていただきたいものですな。皆寂しがっております」


「すまないな。私もいろいろ忙しくてなかなかこちらにはこられないのだ。そのかわり今日はたっぷりと話を聞こう。なにか問題はおこっていないのかな」


エイリアはクーが自分を王宮から離さないのを「忙しくて」と表現する。


「おかげさまでヤカ村は平穏無事でございます。ただ、御領主様があまり立ち寄られないのが玉にきずですが」


なおもしつこく同じことをいう村長にエイリアがどう答えていいか戸惑っていると、


「おじいちゃん。あんまり何度も言うものじゃないわ。エイリア様が困っておられるじゃない。・・・エイリア様お久しぶりでございます」


村長の後ろに控えていた色黒の快活そうな娘が前に出てくる。


「ペルも元気そうだね。昔のような話しかたでいいよ」


この娘は村長の孫のペルでエイリアがヤカ村にいたときは年が近い事もあってよく遊んだものだ。


「いいの?エイリア相手に肩こる話かたはしたくなかったのよね。これも幼馴染の特権てやつね」


村長は孫娘の無礼な態度に顔をしかめるが、何も言わなかった。エイリアがそれを望んでいるなら口出しすべきではないと思ったからだ。

しかし、意外なところから口出しが入る。


「リンクスの前に現れた幼馴染。彼女の存在はいったいなにをもたらすのか」


「フラハ!」


いつの間に現れたのかフラハがエイリアの背後でペンを走らせている。


「何をしているんだ」


「もちろんリンクス物語の取材に決まっているじゃない。なんでも答えてくれるって約束したわよね」


エイリアの問いにフラハは悪びれた様子もなく答える。


「そんなことよりこちらのかわいらしい女性を早く紹介してよ」


フラハに催促されてエイリアはペルを紹介する。


「私の幼馴染のペルだ。こちらは魔法兵団所属のフラハ・リントだ。今回の作戦を手伝ってもらっている」


「フラハ?もしかしてあのリンクス物語のフラハ・リント様ですか。あたし大ファンなんです」


いきなり感激の声を上げるペルにエイリアが不審の目を向ける。


「ペルがどうしてそれを知っているんだ。あれは王宮だけのものだろう」


リンクス物語が連載されている〔王宮の華〕はリサリア王宮内の発行物だ。それなのにどうしてヤカ村に住んでいるペルがリンクス物語の事を知っているのか不思議でならない。

しかし、それにあっけらかんとした声で答えたのはフラハだ。


「あら、知らなかったの?リンクス物語・第一巻はリサリア国内の主要都市で絶賛発売中なんだけど」


「そうなんですよね。この前、行商人が村に来た時に買って読んだんですけど、ものすごくおもしろかったです」


「ふふ。ありがと。今はね第二巻の執筆に向けてエイリアに取材中なのよ」


「そっかー、やっぱりリンクスのモデルってエイリアなのね。そんな感じはしたんだけど、まさかねーって思ってたのよ。でも、ちょっと残念。村にいた頃はあんなに真面目だったのにな、王宮って怖いのね」


「ち・が・う」


エイリアが否定するがペルはまったく意に介さないで、


「あらー。照れなくていいのに。すごいよね。リンクスって。美男子でお金持ちで家柄もいい上に天才的な指揮官だもの。女性にも、もてもてで周りの女性全てに手をだして・・・。あ、あたしはダメだからね。もう人妻だから」


一人で勝手な事を言って、あわてて手を振るペル。


「心配しなくても私はあんなに女たらしではないよ。自分で言うのもなんだが真面目すぎるくらいだ。だけど、結婚おめでとう、ペル」


幼馴染の突然の告白に驚きながらもエイリアは笑顔で祝福した。


「ありがとう、エイリア。正確にはまだ婚約しただけなんだけどね」


そういって舌を出すペルの姿は幼い時に遊んだあの頃のままだ。

その姿にホッとしてエイリアは優しい気持ちになりかけたが・・・。


「再会した幼馴染は人妻だった。しかし、そのことはリンクスの情熱の炎をより燃え上がらせる結果になったのだった、まる」


「勝手なことを書くな~!」


 フラハの一言がなんかいろいろ台無しにしたのだった。


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