不正②
ベルトロッサの不正・・・。
実はエイリアの頭を悩ませた騎士たちの私物でいっぱいになった輸送部隊の大半はベルトロッサが用意した王都から地方に運ぶ商品だったのだ。
いくら第二近衛騎士団の騎士達が愚か者の集まりでもクマのぬいぐるみや枕を本気でただの私物として持ち込むわけがなかった。
もし、商品としての剣や鎧だけが規定の数以上あればエイリアもそのことに不審を抱いただろうが、ベルトロッサが紛れ込ませたクマのぬいぐるみやおもちゃがいい目くらましになったのだ。第二近衛騎士団の騎士ならこんなバカげた私物を持ってきてもおかしくないというエイリアの心理をうまくついたらしい。
つまりベルトロッサは騎士団の経費で商品を運ぶことで商品の利益に輸送代を上乗せして儲けることができたのだ。これが結構な額になり、商品購入代を出資したイーズラ一派に多額の利益をもたらしたのだ。
「リシューは我々側に引き込めないのか」
輸送部隊の事で思い出したのかイーズラはそんな事をいいだすが、ベルトロッサはばっさりと否定する。
「無理だろうね。リシューはまだ団長に信服しているわけじゃないけど、曲がったことは嫌いだから僕達の仲間にはならないだろうね」
「我々が曲がった事をしているというのか」
ベルトロッサの言葉にイーズラの取り巻きの一人がくってかかる。
「自覚ないの?少なくとも全うな騎士のする事じゃないと思うけどね」
「貴様・・・!」
「僕に逆らうのかい。君にはリベル家を相手にする気があるんだろうね」
騎士は言われてハッとしてうなだれる。ベルトロッサは普段は上位貴族としての権威を持ち出してこないから忘れがちになるがイーズラ同様にリサリア王国では最高位である一級階位の家柄なのだ。
―ふん。権威に弱いやつらだね。まったくくだらない連中だよ。ライサーのつめでもせんじて飲ませたいね。
エイリアやクー姫を平気で呼び捨てにする下位貴族のライサーのことを思い浮かべてベルトロッサは騎士をさげすむように見下す。
「ベルトロッサ殿。そのくらいにしてくれ。我々は同志ではないか。しかし、どうにかして団長に一泡ふかせてやることはできないか」
イーズラがあいだに入ってとりなしてくる。
「イーズラ様の隊とベルトロッサ様の隊で団長を襲うというのはどうでしょうか。今回の部隊編成では我々側に精鋭がそろっているのはあきらか。我らが協力すれば必ずや団長の首を取れるでしょう」
名誉挽回するようにうなだれていた騎士がそう提案すると、
「それはよい。戦力的にみても我らの勝利はあきらか」
「盗賊どもの仕業にみせかけて襲えば問題もありませんな」
得意げにいう騎士たちの顔をベルトロッサはあきれて眺めている。
〔戦力的に可能〕それだけの理由で実行可能だと思うなんてどこまでも単純な頭の作りになっている。
―バカだとは思っていたがここまでとはね。ここまでのバカの集まりは珍しいからよくみておこう。
ベルトロッサはなんだかおもしろくなってきて傍観を決め込もうとするが、やがて話が本当にエイリアを襲撃しようという話になってきたので口を挟む。
「それは少し早計じゃないかな。団長はなんといっても王家の血筋、戦死したともなればそれなりの調査が行われる可能性がある。それに僕の隊の人間でもライサーなんかは僕が命令しても絶対に団長の味方をするよ。案外そういう騎士は騎士団の中でも少なくないと思うよ」
「ベルトロッサ様は我らの提案に反対ですか。やはり団長と通じているのでは・・・」
騎士達はごく当たり前の意見を述べたベルトロッサに疑いの目をむける。
―たまらないね。人がせっかく親切に破滅の道から救ってあげようとしているのに。
騎士達の愚かさにベルトロッサは腹がたつよりもあきれたが、
「いや、ベルトロッサ殿の言うとおりだ。団長を襲うなどということは不可能だろう」
さすがにイーズラはそこまでバカではないのか、ベルトロッサに同意する。
「だが、盗賊どもを利用するというのは悪い案ではない。こういう手でいこうとおもうのだが・・・」
イーズラは声をひそめて続けたのだった。




