苦情⑤
その後も何人かこの執務室を訪れては苦情を述べてきたが、エイリアはそのすべてに丁寧に対応していく。
そしてこの日の最後にこの執務室を訪れたのは黒眼王子レスタークスだ。
「エイリア。困ったことになった」
開口一番そういうレックス。
―今日はレックスまで困ったことになっているのか。
エイリアは心からうんざりするが、レックスの言葉を待つ
。
「実は俺の結婚式が早まりそうなのだ。父上がやけに急がれていてな。もしかしたら君が盗賊討伐に出ている間に式が行われるかもしれん」
レックスは申し訳ないといった態度だ。
「ずいぶん急なことですね。私はいいですが第二近衛騎士団には上級貴族も多いし、普通なら結婚式に列席するも者も大勢います。すくなからず不満が出るでしょう」
「そうなのだ。俺もそのことを言ったし、ケット王国側からももう少し待ってほしいといわれているのだが父上の意思は固い。この結婚による同盟を急ぎたいのかもしれないな。エイリア、盗賊討伐はどのくらいで済みそうなのだ」
「はっきりとした時期は明言できそうにありませんね。相手は神出鬼没で本拠地もわかっていませんから。一応探りは入れていますがしばらくかかりそうです」
「そうか。俺も王家の隠密にそれとなく調べさせているが、彼らでも尻尾をつかめないらしいからな。そう簡単にはいかないか」
―隠密を使ってくれているのか。レックスも自分のことで忙しいはずなのに・・・。
「レックス。ありがとうございます」
エイリアが心から感謝する。
「いや、いいんだ。俺の結婚式には君にも出席してもらいたいからな。いわば俺は自分のためにやっているにすぎんよ」
レックスはそういって快活に笑ったのだった。




