苦情①
イーズラその他を移動させた盗賊団討伐の最終的な人事をエイリアが発表すると何人か苦情を言ってくる者がいた。
エイリアはこの苦情に応対するのも自分の仕事のうちと割り切っていたが、苦情を言ってくると予想していなかった者まできたのには閉口した。
まずその一人目がベルトロッサだ。
「団長、なんでうちの隊はズースなんですか?フラハちゃんをよこせとは言いませんがせめて団長の隊の所属になっているユニとミハルをつけてくださいよ」
ベルトロッサは魔法戦力の振り分けについて不満があるらしい。
「なぜだ?私の見たところではフラハには及ばないものの、見習いの二人よりはズースの方が魔法をよく使うぞ。専門の魔法兵としての教育は受けていないから不安かもしれないが、魔法兵団の二人よりもズースの方が使えるのは間違いない。フラハがそう言っていたからな。だから戦力的には心配しなくていい」
「そういうことじゃなくて華がないんですよ。華が」
ふ~。エイリアは溜息をつく。真面目に聞いて損をした。そんな気分だ。イーズラの件で目を見張る提案をしたかと思えばこれだ。
冗談で言っているかと思いたいが、イーズラの件で相談した時よりもベルトロッサはよっぽど真剣な顔をしている。
「仕方ないだろう。イーズラを押さえるのはプロビオだけでは難しいからフラハをつけてなくてはいけない。フラハならイーズラと同じ階位だし、プロビオと二人ならうまく押さえるだろう。かといって借り物である見習いの二人を主力として戦ってもらう君の隊に入れるのは危険すぎる。必然的に君の隊はズースになるんだよ」
「しかしですねえ、華がないと僕のやる気がでないんですよ」
ベルトロッサはさも重大なことのように大真面目な顔でそう主張する。
「じゃあ私と交代して君が私の隊の隊長をするか?バカたちの相手をしなくてはいけないが見習いの二人がいるぞ」
エイリアにしてみればどちらでもよかったのだが、ベルトロッサは少し考えたあと意外にも断った。
「・・・イヤですね。団長の隊の面子を見ましたけど、あれは副長からきいた大バカの隊でしょう?いくら女の子がいていい気分になっていてもあんなのを率いていたら胃に穴が空きますよ。僕は小バカの隊で結構です」
極度の女好きのベルトロッサが女性と一緒になるを避けてまで自分隊の隊長になりたくないという事実にエイリアは嘆息する。
「私はもう胃薬の用意をしているよ。これ以上私の胃に負担をかけるような事を言わないでもらいたいな」
「わかりました。団長の胃が可哀想ですから、今回は華の方は我慢しましょう。そのかわりこの盗賊団討伐が終わったら素敵な女性を紹介してくださいね」
ベルトロッサは承諾しながらも、ちゃっかりと条件をつけてくる。これさえなければ、とエイリアは思わないでもないが、その程度の事できちんと働いてくれるなら第二近衛騎士団ではまだましな方だ。
「・・・わかった。考えておく。そのかわりしっかり働いてもらうからな。第二近衛騎士団に所属する者のみで構成した君の隊が今回の作戦の主力なのだから。そうでなければ意味がないのはわかるだろう」
もし、フラハや見習い二人を主力部隊に組み込んだら、他の軍団(今回は魔法兵団だけだが)の力で作戦を成功させたと言われかねない。
第二近衛騎士団単独でやればそのような批判を受ける事もないのだが、そうできる力がこの騎士団にはないところにジレンマがあるのだ。
「わかりましたよ。できるだけがんばります。だけど、紹介の件は約束ですからね」
ベルトロッサは念を押してから去っていく。




