不正②
「冗談でもそんな事を言わないでくれ。君に不正をされたら私でも気づけないよ」
疲れたように言うエイリアにベルトロッサはさも真面目そうな顔をして聞き返してくる。
「それってほめているんですか?」
「そのつもりだ」
答えながらエイリアは小さくため息をついた。
―団長も疲れているなあ。無理もないけど。からかうのはこれくらいにしておくかな。
ベルトロッサは無意味なエイリアいじりをやめて、本当に真面目な意見を言う。
「しかし、イーズラも輸送隊長の役目をはずされては黙っていないでしょう?」
「だから、プロビオの代わりに一部隊を率いてもらう事にしたよ。それなら君に輸送隊長を兼任させても大丈夫だろう」
エイリアは自分の策を言うが、ベルトロッサは疑問に思う。
このようにエイリアの意見に疑問をいだけるのは貴重な存在でベルトロッサはこの点でもエイリアになくてはならない存在になりつつあった。
「それでは、十分ではないですね。イーズラの事です。僕が部隊長と輸送隊長を兼ねていると知ったら自分にも部隊長以外に何かもう一つ役をつけろと言ってきますよ」
「それは考えないでもなかったが、君の他に適任の者がいないだろう」
ベルトロッサは視線を宙に向けてしばらく考えると、
「リシューはどうです?彼に輸送隊長を担当してもらうのはどうでしょう。彼なら不正をする事はないでしょうし、歳は若いけど階位も高いから不自然な人事でもない。彼を僕の隊の副隊長にしてもらえば、僕が物資調達も手伝う事もできます」
リシューは年少だが第二近衛騎士団には珍しく高潔な性格をしているからベルトロッサの提案は悪くない。ただ、この場合、人材上の問題が生じてくる。
「彼は私の隊の副隊長だぞ」
第二近衛騎士団において数少ない有能な人材であるリシューはエイリアは手放したくないのだ。
「では、隊長がリシューを手伝いますか?大変ですよ、物資調達を管理するのも」
エイリアもベルトロッサもリシューが一人で物資調達をするのは無理だと思っている。リシューは年若いし(といってもエイリアとベルトロッサの二つ下だが)、性格が高潔すぎて融通の利かないところがあるからだ。
役目に慣れてくれば、それらも欠点として写らなくなってくるだろうが最初から一人でやらすのは難しいだろう。
「副長くらいは有能な者を使いたかったのだが」
エイリアがあきらめたように嘆息すると、
「まともな者がないと大変ですねえ。団長はきっとやりくり上手になりますよ。女性だったらきっといいお嫁さんになりますね」
「それは私の顔かたち関する皮肉か?」
エイリアの言葉に答えないでベルトロッサは笑って去っていったのだった。




