三人
ライサーは秘かに感心する。
サスケの構えが一朝一夕でできるものではないことを見抜いたのだ。
―こいつは木剣でやるべきだったか。
真剣でも十分あしらえると思ったが、どうしてなかなか隙がない。
やがてライサーから仕掛ける。先手必勝はライサーのいつもの手だ。
二人が打ち合うごとに、火花が散る。
「はっ、なかなかやるじゃねえか」
楽しそうに言うライサーだが心中それほど余裕があるわけではない。かなり本気でやっているのだ。
―ベルトロッサには劣るが、なかなかやるぜ。
「技と、スピードは合格だ。だが!」
力任せの強烈な一撃を打ち込んでサスケの剣を高く弾き飛ばす。
「力が決定的に足らないぜ。ま、うちの騎士団のなかじゃあ見込みはあるほうだな」
サスケの首筋に剣を構えたまま勝利宣言をするライサーの右手に冷たい感触が走る。
「そっちもなかなかだな」
いつのまに取り出したのか、サスケはナイフをライサーの手首に突きつけているのだ。
「そこまでだ。二人とも納得したな。それくらいにして、握手でもしろ」
これくらいがころあいだろうとエイリアが止めに入る。
「お前、気に入ったぜ。よろしくな」
「こちらこそよろしく頼む」
エイリアに言われてしぶしぶ二人とも手を差し出すが握手できない。ライサーが左手を出していて、サスケが右手を出しているからだ。
「これじゃあ、握手できないだろ。左手を出せよ」
「僕は左が利き腕なんだ。そっちが右手を出せばいい」
二人とも利き腕じゃない方を差し出しているのだ。これは相手が不意打ちしてきてもとっさに対応できるためだ。つまり、相手を信頼していない証なのだ。
「じゃあ、こうしよう」
そう言って二人の間に入ってライサーの左手を右手に、サスケの右手を左手に握ってくるのはベルトロッサだ。
「これならみんな手をつなげるね。ちなみに僕は両利きだからよろしく」
あっけにとられている二人を尻目にベルトロッサはぶんぶんと握った手を振っている。
やがて我に返った二人は
「別に利き腕だからってどうってことねえよ」
「僕だってそうだ」
といってお互いに利き手を差し出す。
ベルトロッサがいとも簡単に両手を預けたことに対抗しているのだが、これではまた二人とも握手することができない。
「いっそのこと両手で握手したらどうだ」
みかねてエイリアが言うと二人は本当に両手で握手をする。もはや握手というよりも変なダンスを踊っているみたいだ。
―どっちも子供だな。もう少しなんとかならんものかな。特にサスケは本当に子供だが、ライサーはもう大人だろうに。
その点ベルトロッサは人間が出来ている。利き腕を預けるという意味をあまり考えていないだけかもしれないが、絶対に握手をしないと思われた二人をあっさりと握手させたのはベルトロッサの手腕だ。
そのベルトロッサがダンスを踊っている二人には聞こえないようにエイリアに耳打ちしてくる。
「あ、そうそう、団長、サスケちゃんって女の子ですよね」
「なんだと?」
「いえね、さっき握手しましたけど、あの手は女の子でしょう」
握手したといってもサスケは完全武装で鉄製の手甲をつけているので、その手の柔らかさがわかるはずがない。もっとも、ベルトロッサは手の感触で判断したわけではなく、彼流にいうと、「なんか感じたんだよね~」なのだが。
―信じられないな。いったい、どういうやつなんだ。ベルトロッサは。
エイリアが不思議な生き物を見るような目でベルトロッサを眺めていると
「ま、誰にも言わないから安心してください。なにか事情があるんでしょう」
勝手に納得するベルトロッサに
「そうしてくれると助かる」
エイリアは不気味なものを感じながらも礼をいう。
「あ、そうそう、大事なこと聞き忘れていました。サスケちゃんの素顔はどんな感じなんです?結構かわいいでしょ?それもわかるんですよね~。こんど紹介してくださいね」
最後にベルトロッサの特殊能力〔女好き〕はエイリアにめまいを感じさせた。




