サスケ
盗賊団討伐の出発の日が迫るにつれて、ベルトロッサ隊の騎士達の腕前は飛躍的に伸びていた。それはライサーの力によるところが大きいが、ベルトロッサもいやいやながら騎士達に稽古をつけているのもそれに一役買っている。
もっとも二人自身はあの日以来剣を交えることはしていない。本気で戦った事で仲が悪くなったわけではなく、お互いにいい意味での対抗心があるために稽古であってもつい本気になってしまうから自粛しているのだ。
稽古の合間の休憩中にベルトロッサはライサーに話しかける。
「そういえば団長はどれくらい剣を使えるのかな」
「ああ、エイリアか。あいつはフツー。フツーに使えるくらいだな。いたって標準的な腕前だ。それでもうちの騎士団なら二十指くらいには入るけどな」
「へえ、団長にも普通なところがあるんだ」
「まあな。エイリアはもともと平民として育っていただろ。だから、俺たちみたいに剣を幼い頃から叩き込まれてなくて、剣の修行を始めたのがこっちに来てからの四年間しかないわりにはうまくなったと思うぜ。剣才はそんなにないけど覚えはよかったからな」
「ふ~ん。なんにしても団長が自ら戦うなんてことは避けなくちゃだな」
「ああ。あいつは後ろで作戦を考えてくれるだけで十分さ」
ここ数日の間に二人はお互いにその能力を認めてきている。ベルトロッサとライサーはまったく正反対の性格をしているだけに自分にないものを持っている相手を〔すごいヤツだ〕と思ってしまうのだ。
ベルトロッサは常に気を抜いているように見えるが、実際は頭の回転が速く、手際よく物事を進めることができるが、そのぶん横着で狡猾な面を持っている。
もっともベルトロッサ本人は物事を進めるには何事も誠意をもって正統なやり方でするべきで、そうでなければ人から信頼されずうまくいかないと思っているので、常に自戒して誠意のある行動をするように努力しているがそれは天性のものではないから、つい重要でない事には適当になりがちで、そんな自分に不満をいだいている。
それに比べてライサーは一本気で曲がったやり方をしないだけでなく、生まれつき誠意の塊のような男なのでどんなことでもいい加減なことをしたりしない。そんなライサーをベルトロッサはうらやましく思ってしまう。
逆にライサーは自分には融通の気かないところがあるから友人も偏ってしまい、人の意見を受け入れないところがあるのをわかっているだけに幅広い人脈を持つベルトロッサの柔軟性にすくなからず感心してしまう。
本人達は否定するだろうがこの二人の相性はいいようだった。
「やっているな。なんとかモノになりそうかな」
「ご覧の通りです。案外ダンスよりもこっちの方が向いている騎士も多そうでよかったですよ」
ベルトロッサが鍛練場の様子を見に来たエイリアに微笑んでいる。
「誰だ?こいつ」
ライサーはエイリアの側に寄り添うように立っている完全武装の小さな騎士を無遠慮に指差す。顔をすっぽり覆う兜をかぶっているため人相がわからない。
「彼はサスケと言って私の護衛をしてもらう騎士だ。二人とも仲良くしてやってくれ」
「へえ、こんなチビがねえ?大丈夫かよ」
「問題ない」
サスケは声色を変えて答えるが、元の声が女の子らしい高い声のために少年のような声になってしまう。
「おいおい、声まで子供じゃねえか。こいつで大丈夫かよ。俺がやっぱりエイリアの隊に入ろうか?」
「問題ないと言っている。大きければいいというものではない。知っているか。〔大きすぎる剣は置き場に困る〕ということわざを」
体格のいいライサーを揶揄するようサスケは言う。
「やめないか。二人とも」
エイリアが間に入るが
「いーや、こういう時は騎士なら剣で語るべきだぜ」
「・・・いいだろう」
ライサーが剣を抜くとそれに応えてサスケも剣を抜く。
―へえ、ガキのくせに構えはなかなか様になっているじゃねえか。




