対抗心
サスケはエイリアに頼まれた調査の報告をするために来たのだが、この二人に鉢合わせたのだ。
「あなた、いくつ?エイリアに仕える侍女にしては若すぎるんじゃないの?」
クーは自分と大してかわらないように見える少女がエイリアの身の回りのせわをするほどの能力があるように思えないのだ。
「十四です。祖父がエイリア様にひとかたならない恩を受けまして、その縁で私も雇っていただいたのです」
サスケはなるべくクーを刺激しないように答えている。クーの機嫌を損ねる事はエイリアのためにならない事がわかっているからだ。
「ふ~ん。私と同じ歳なんだ。でも、本当に侍女という証拠を見せてもらわないとね。もし、スパイだったら牢屋にぶちこまないといけないもの」
「証拠といわれましても・・・」
ぶっそうな事を言い出したクーにサスケが返答に困っていると、
「エイリア~。入るわよ」
ノックもせずに入ってくるのはフラハだ。
「あら、ライサーにクー姫、それにサイじゃない。みんなで集まってどうしたの?」
フラハの姿にサスケはほっとしてお願いする。
「フラハ様、私が不審な者ではないと説明していただけませんか。姫様達に私がエイリア様の侍女だと信じていただけないのです」
サスケはフラハとは面識がある。もっとも、フラハもエイリアの隠密のサスケではなく侍女のサイとしてしか知らないのだが。
「なるほど。だからこんな険悪な感じなのね。大丈夫です、クー姫。彼女は正真正銘エイリアの侍女です。安心してください」
「そうなの。フラハが言うんなら間違いはないだろうけど、エイリアってこんな女の子と二人で住んでるわけ?それっていいのかしら」
「いえ私の他にも使用人がいますから二人で住んでいるわけではありません」
クーの追及にサスケは困惑しながらも、少しうらやましく思ってしまう。こんな風にエイリアに対する好意を素直に表すことが自分の立場ではできないからだ。しかし、ここは嘘でもエイリアに対して特別な気持ちを持っていない事をはっきり言っておくべきだろう。
―そうすることがエイリア様のため。私はエイリア様の足手まといにはならない。臣下として当たり前の事。
サスケは自分にそう言い聞かせるが、なぜか出たのは違う言葉だ。
「それでは私はこれで・・・」
はっきりと誤解を解かずに立ち去ろうとする自分に驚きながらもサスケがドアノブに手をかけようとしたその時、ドアが開く。
「それでベルトロッサ、さきほどの件だが・・・ってなんだ?これは?」
「これまた皆さん勢揃いですね」
エイリアがベルトロッサと話ながら入ってくるが、外出中なので誰もいないはずの自分の部屋の中に四人もいるのでびっくりする。
「エイリア!」
「エイリア様!」
クーとサスケの声が重なる。
―なんかコレめんどうなことになってないか?
エイリアがフラハの方を見ると嬉しそうな顔でエイリアとクーとサスケを見くらべながらすらすらとメモ書きしている。
―ふっふっふ。いいわ。これ。この状況。面白くなりそう。
エイリアにはフラハの考えている事が声に出しているように伝わってくる。
だが、そんなすっかり人事のようなフラハにも、
「ベルトロッサ・リベルと申します、フラハ嬢。おうわさどおりお美しい」
さっと近づいたベルトロッサがうやうやしく手を取ると手の甲にキスをする。
「ありがとう」
フラハはぎこちない笑顔で応じるが、それに対抗するように、
「よう!フラハ、相変わらずきれいだぜ」
あいている方の手をライサーが取ってキスしてくる。普段はこんな事をしないくせにベルトロッサに対抗しているのだ。
―両手を取られたらメモがとれないじゃない。こういうのはその場で書かないとうまく表現できなくなるのに。
二人の行為をちょっと迷惑そうにするフラハ。その様子を見ていたクーは
「エイリア、エイリア」
と嬉しげにその小さく白い右手を差し出してくる。エイリアは苦笑しながらひざまずき、
「姫。お待たせしたようですね」
とその手を取って軽く口づけをする。
「それでみんな何の用なんだ?」
エイリアが最初に目を合わせたサスケはすぐに
「私は失礼します。急ぎの用事ではありませんので」
「すまないな。サイ。また後できてくれ」
サスケの調べてきた事は誰にも知られたくないので、大勢の前で報告してもらうことなどできないのだ。
それに続いてベルトロッサも出て行く。
「団長、僕はフラハ嬢と作戦上の込み入った話があるのでお先に失礼しますよ。さあ、行きましょう、フラハ嬢」
「エイリア、俺もフラハに相談しないと行けない事があるぜ、行こうぜ、フラハ」
「え、ええ。あ、エイリア後で話しておくことがあるから」
ベルトロッサとライサーに両手を取られて引きずられるようにしてフラハは出て行く。
「フラハってもてるのね」
「あれはもてているんでしょうかね?」
「そうよ。まったく、エイリアは恋愛がわからないんだから。子供ねえ」
大人ぶっていうクーはエイリアの鈍さにあきれ顔だ。
もっともクーにとってはもうフラハがもてようがどうだろうがどうでもよかった。
やっと心置きなくエイリアと話が出来るのだから。
長身のエイリアにもたれかかるようにしてクーはエイリアの顔を見上げている。
「それでね、エイリア・・・」
このあとクーの二日分の話にエイリアは付き合うことになったのだった。




