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踊る騎士団~騎士団長はツライよ~  作者: 東野 千介
第一章 はじまりのとき
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父親

 話が少しそれたが、今のドゥーカス王が王位に着いた時にリサリア王家に仕えてきた者はほとんどドゥーカス王に仕えることになった。

 ただ、リサリア王家の隠密として使えていた者の中にエイリアの父親にしたがって出て行った者が数名いた。それがサスケの一族だ。


 実は一族の意思ではなく、先代の王が勘当した王子を心配して遣わしたものだった。


 先代のリサリア王は王として立場からかけおちした王子を勘当したが、父としては愛する者と結ばれた息子に対して縁を完全に切ることはできないといういじらしい気持ちがあったのだ。


 こうしてエイリアの父親はリサリアの王子であったが、最後は平民として生きて死んだ。その事を知っていたのはサスケの一族と彼らから連絡を受けた先王のみであった。

 その先王が死の間際にドゥーカスに王位を正式に譲る時になって孫であるエイリアの事をドゥーカスに託した事によりエイリアの運命は変わってしまう。

謹厳なドゥーカスは先王の遺言どおりエイリアを探し出し、第二近衛騎士団長という重職に迎え入れたのだ。


この時にエイリアは血統がて絶えていた無黒の公爵家ワイトの名跡をもらっている。

黒眼黒髪の両方を持つエイリアが黒眼と黒髪のどちらも持たなかった無黒の公爵家を継いだのは皮肉だと言っていい。


このことからも第二近衛騎士団は戦わないためにつくられたと言われる。

先王の孫であり、リサリア王家の正統な血筋であるエイリアを危険にさらさないために戦わない騎士団をわざわざ創設してその身を安全なところにおいたのだ。

ドゥーカス王はエイリアを第二近衛騎士団長に抜擢した時に自身の直臣をわけようとしたのだがエイリアは固辞している。


 父親のわがままで国を混乱させたのだ。それなのにぬけぬけと王宮に戻って王の配下をもらってその力を弱めるような事をしたくなかった。ただ、父のしでかしたことの責任をとって自分が国の役に立たなければならないという使命感からエイリアは第二近衛騎士団長を受けたのだ。


 エイリアは父親が好きではない。


 父も母も幼い時になくなったからほとんど記憶がないが、二人ともエイリアの事を大変かわいがってくれていたとかすかに覚えている。

 かすかな記憶だがそれだけに記憶違いはないだろう。

 だから、エイリアが父を嫌っている理由は記憶中の父にはない。

 むしろ記憶中の父には親しみしかなかった。平民の子として生まれ、平民の子として育っていた時は両親の愛情に包まれた記憶で幸せだった。   

              

エイリアの父に対する怒りは一国の王を継ぐ身でありながら、自らの欲望を優先させて国と民を捨すてた父親の所業によるものだ。


 たまたま賢明なドゥーカスが王に選ばれたからよかったものの、暗愚なものが選ばれていたり、誰も選ぶことなく先代の王が死んでいたらリサリア王国の貴族たちは王位をめぐって大いに争っただろう。


いや、実際争いは起こった。ドゥーカスが王位継承者に指名された直後に小規模ながら、その王位を認めないと反乱が起こっているのだ。

実際、ドゥーカスは国内を完全に安定させるのに王位継承者に指名されてから十数年の時を費やしている。この間に皇帝暗殺があり、もし、リサリア王国が王位継承問題でもめていなければ今の戦国乱世はなかったという見方もある。


それによれば皇帝の血筋を引いていて、広大な領地、地方勢力随一の実力を有するリサリア王が暗殺された皇帝に代わって当然に新皇帝になっていたということだ。


ただ、これには現実には無理がある点がいくつかあった。帝都との地理的な問題や他の王国もそれなりに力を有していたからだ。だが、リサリア王新皇帝説はリサリアの民以外にも根強くあり、それだけリサリア王国が強大だとみられているという証でもある。

 エイリアには今の世界中が争っている状態がやりきれない。自分の父親のわがままがこの戦国時代を本格的に引き起こしたように思えてならないのだ。もっともエイリアの知識は自分の父親が順当にリサリア王国の王位を継いでいたとしても現在の戦国時代は避けられなかったと告げているが、それでも「もし」と考えてしまう。


 歴史に「もし」はない。当たり前のことだ。使い古された言い回しだが、その「もし」を考えてしまうのもまた当たり前のことなのだ。


 もっともエイリアの「もし」は今の自分がリサリアの王子だったらという考えではない。

 エイリアの「もし」は父親がリサリア王家を継いでいたらというところで止まっている。

 ドゥーカスが自分に気を使ってくれながらも、自分の事を警戒している事を感じ取っている。

 自分がリサリアの王子だったらと考えることは不敬であり、無用の危険を自らに及ぼしかねない。

―この黒髪と黒眼はリサリアに対する裏切りの印だ。

 そう考えているエイリアには自らの血筋の正当性を主張して王位につく意志は全くない。

 ドゥーカス王は現代の大陸三賢王に数えられるほどの名君(多少親バカなところはあるが)だし、次期王として第一王位継承権を持つレスタークスも国内外に父王以上との名声を得ている。

 ―王がもし悪王だったら国民のために私は立ち上がったのか?あとを継ぐレックスが案愚だったら私はその地位を奪おうとするだろうか?

 その考えを振り払うようにエイリアは頭を振ると、


「私は第二近衛騎士団長としての役目を果たす。サスケ、君にも働いてもらう事になる。・・・私は第二近衛騎士団長エイリア。ワイトだ」


 自分に言い聞かすようにサスケに語りかけたのだった。

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