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プランニング

お久しぶりです。予定ではあと2話で終わりです。



その後、私は王子の婚約者の役に恥じぬよう勉学にも励み、社交には気をつけ、サシェル様達のおかげか周囲は私は私、姉は姉、見た目も中身も似ていない。と言われるほどまでになり……。私自身も、すっかり引きこもりではなくなりました。


学院へと進学したことも大きな要因です。あちらは寮生活ですし。


「リトリス」

「いかがいたしましたか?」

「……最近、忙しすぎないか?」

「……いえ?殿下と予定が合わなくはなっておりますが、特には」


私を婚約者にした後、王子は以前より忙しくなったらしく、顔を見るのは週一くらいになりました。私は私で、色々とする事があり予定も合わず、互いに見かけて時間があるときにお茶をご一緒する程度ですね。


「……第一王子と君の姉君の婚約のことだが」

「……はい。驚きました。とりあえず、家が潰れない程度に買い物などさせて、監視を増やしています。

……遊びによっては、事故・事件が起きて外出を問答無用で禁止できるように仕込んでありますので、ご安心を」


王子からすると心中穏やかじゃない話でしょうね。初恋の人の妹に容赦なく想いを千切られ、かと思えば数年後初恋の人が兄王子の婚約者に。なんて。

しかも、自分の婚約者は冷酷で美人でもない初恋の人の妹。これは八つ当たりするしかないですね。


さて、姉がどうやって王子なんて引っ掛けてきたのかは分かりかねますが、状況はあまりよろしくありません。そうでしょう?

理由はどうあれ、同じ家の令嬢2人がそれぞれ王子の婚約者になってしまっているのですから。権力とか政治的にまずいのです。


「……王子、私と婚約破棄するご予定は?」

「………………。……は?」

「?いえ、ですから、私と婚約破棄「リトリス嬢!ちょっと待って!!」はい?」


王子が聞き取れなかったようなので、もう一度言おうとしてマルク様に止められました。


「リトリス嬢?急に何を言い出すの?」

「国内政治と権力、そして第一王子を立太子させる為にはと考えた結果、私達姉妹が揃って王子達の婚約者でいるのはどうかと思いまして。

王子に意中の方がいるならその方と婚約していただき、私は婚約破棄。姉は下りないと思いますが、私が婚約破棄されるような不良物件と知れ渡れば第一王子も姉とは別れるかと。

恐らく……私の姉だから、身元も性格も問題ないだろうとでも言われたのでしょう?」


第一王子、夜会や催し物にはほぼ出ませんから、噂を耳にしていないのでしょうし、姉の美貌に夢中になっているとするなら、そんな噂話が耳に入っても多分信じませんからね。

しかし、事実は事実。姉は色々と……王太子妃の器にはそぐわないことをしておりますので、第一王子を立太子させるには、言い方は悪いですが排除せざるを得ないのです。


「リトリス嬢、もっと発言に気を付けて」

「もちろん。言っていい場所を考えて話しております。私を婚約者に選んだ時点で、未だ意中の方が見つからないことも知っております。

幸いにも、この休みが開ければ3学年ですので、新しく入ってくる令嬢達の中から撰ばれる方が出る事を願っております」

「リトリス嬢、……なんでトドメを」

「はい?」


マルク様が恐ろしいものでも見たかのような目で私を見ます。……私は事実を申し上げただけですのに。


「王子の気持ちも考えてあげてください……」

「心中穏やかではないのは分かっておりますよ?

第一王子の立太子が遠くなりそうなうえに、その婚約者が初恋の女性。腹立たしいにも程がございましょう。私に八つ当たりしてくださって結構ですよ?

と言いつつ、私の存在自体がストレスかと存じますので、暫く離れております。御用の際はお申し付けください」


「失礼いたします。リトリス様をお迎えに上がりました」

「それでは、私は(建前の)王子妃教育がございますので、失礼いたします」


……そう言えば、王子と婚約する前から王子妃教育と全く同じ内容のお勉強をさせられていたような?まさか王子が、わたくしと本当に婚約…ひいては結婚したいわけがございませんし……。……ですが、私を側妃にして、お相手に一切執務をさせずに私に仕事をさせようとしていた可能性はございますね。一体どこまで使い潰すおつもりでしょう?まあ別に良いのですが。

道連れにしろと言ったのは、私の方ですし。ですが出来る事なら第一王子の立太子は、王子と結婚する前でお願いしたいです。その方が自由に動けますので。




そうして私達も最高学年の在籍となり、漸く新入生達を迎える事になりました。


王子を始めとして私やサシェル様が務める生徒会の大事な行事の一つ。入学式。

王子が挨拶をし、案の定女子生徒たちの視線を釘付けにして、何人かは身惚れ、何人かは野望を胸にしているご様子でした。

勿論式は恙無く終え、私と王子は共に教室へと向かっておりました。


新入生達は先程教室まで案内し、今は寮や学校生活での注意事項について教師から説明を受けている頃です。また、在校生達はまだ登校日ではない為、本日登校する必要のない生徒達は寮で新入生達を歓迎する準備をしているでしょう。

ですから、廊下を歩いているのは王子と私、それから伝令で動いている教師くらいのはず、ですが。


「リトリス」

「っ!?」


曲がり角に差し掛かる直前に、王子に腕を掴まれて引き寄せられました。バランスを崩しましたが転ぶこともなく、いつの間にか王子に抱き上げられておりました。……王子、いつの間にこんなに鍛えたのですか!?数年前まで剣を一振りするだけで顔を真っ赤にしていましたのに!


「リトリス、大丈夫か?」

「は……い。ありがとうございます。お陰様で怪我などはございませんわ」

「それは良かった。だが当然の事をしただけだ。君が怪我をしたら私は正常でいられなくなってしまう」

「そうですね。王子に負い目が出来てしまい、婚約破棄をし辛くなりますね。ですがご安心を。責任を取ってくださいなんて言いませんわ。

それより……そちらの方は、大丈夫ですか?」

「ふぇっ!?え、えっと、あの、はいっ!!」


なるべく怖がらせないよう、笑顔で声をかけると顔を真っ赤にしながら元気に答えてくれました。同時に私を抱えたままの王子の機嫌が悪くなったような気がしますけれど、気のせいですわね。多分。……きっと。


ともあれ、私が先程まで立っていたところに女子生徒が1人座り込んでおりました。……滑って転んだ?まさか、走っていた……?

というか、彼女は新入生では?


「怪我が無いのなら早く教室に向かった方がいい。既に寮案内が始まっている」

「……殿下、彼女は道に迷われたのでは?」

「………………。案内する。すまないがリトリスも来てくれ」

「承知いたしました」


言うなり王子は踵を返して、1年生の教室へ向けて足を進めていきます。ついてこない気配に、私が足を止めて振り返れば我に返って慌てたように新入生が立ち上がり、付いてきます。

……うん。王子、そこはまるで御伽噺の王子が如く、乙女を魅了する優しげな笑みを浮かべて手を差し伸べる所ですわ。


新入生の中でも外見で群を抜いていた1人ですし、王子と並んだ時に違和感もありませんわね。後は教養と作法と性格はいかほどかしら?

彼女はどう見ても王子に気がありそうですし、ふむ。様子見は必要ですが、……場合によっては使えるかもしれませんね。


彼女の教室の前まで来て、役目は終わりとばかりに王子が踵を返します。私もそれに従い、彼女の横を通り過ぎる際、そっと耳打ちをしておきました。


「王子に気があるのなら、今日の夕食後私の部屋に来なさい。三階の1番奥。案内を送るわ」


乗るか反るか。まあ恐らく来るでしょう。だって彼女、先ほど王子に抱えられた私を見上げて、「何で王子が冷たい……?誰?あのモブ」って言ったもの。モブ?とやらの意味は知りませんが、どうやら彼女が知っている何かと現実が食い違っているようです。

戸惑った様子を見ても、それはかなりの大きな疑問の様ですから、解決するために、彼女は間違いなく、私の所へ足を運ぶでしょう。


……何故か少々、苛立たしい気分です。……早めに寮に戻って休養を十分とって、彼女を迎え入れなくては。


そして渋る侍女を宥めて迎え入れた彼女から洗いざらい事情を吐き出していただきました。

曰く、彼女には前世の記憶があって、その世界でこの世界の話があって、その世界でもヘリオス様は義兄である第一王子を立太子させる為に活動していたようです。

突然現れた主人公……(目の前のこの新入生)に心惹かれながらも、第一王子の婚約者である私の姉を使い主人公を襲わせ、その犯行を主人公に暴かせ、私の姉を追放し、自らもその黒幕として裁かれ第一王子を立太子させざるを得なくし、獄中にて亡くなる。……そういう役回りだと。


……私、初めて、心底、ヘリオス様の婚約者で良かったと実感しております。

この立場にわたしが居る事で、あの方は裁かれる事なく、悪役を演じずに済む。

今後の方針が決定いたしました。


「前世云々物語云々と……色々理解が追いつき切らない面はありますが、概ね把握しましたし、信じましょう。私も、王子の願いが叶うとしても、その結末は望まない。


それから……、

私が今生きているこの世界が、今までしてきた選択が、全て、誰かの決めたものだなんて絶対に許せません。私の選択は、私自身の責任。貴女が生きているのは、物語ではない。

現実です。……それだけは、忘れないでください。


その上で訊ねますが……シュリィさんの望みは、私の婚約者である王子と結ばれることですのね?」

「は、はい。というか、幸せになっていただきたいです」

「それは結構。そうですわよね。皆がそれぞれ望みを叶えられるのなら、それが一番良い結末ですわ」


上々でございますわ。そういう事なら、一応の為の最後の確認を込めて、状況を整理します。


「シュリィさん。貴女は王子に幸せになって欲しい。出来る事ならそのお側に自分がいたい。

王子は第一王子を戴冠させたい。その為の手段は選ばない。

私もまた、王子には是非とも望みを叶えていただきたい。その為に、婚約破棄まで持っていく必要がありますの。


利害が一致しましたわね。私たち、手を組みませんこと?貴女が王子から婚約破棄を引き出してくださると言うのなら、僭越ながらこの私、貴女を王子にふさわしい令嬢にしてみせますわ」


貴女(ヒロイン)には、私(悪役令嬢)が必要なのでしょう?

読了ありがとうございます。

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